◆【色とりどりの世界、薄紅の章】出会いは優しい雨の中（８＋６、６視点）

恋花（こいはな）様から拝借したお題、８つ目です。
が。
スコール氏の描写が、おかしなことになってしまったのは、管理人の力不足です。
ファンの方には本当に申し訳ないと思っております。

厳しい顔で、厳しい声。
でも、とてもあの人は、優しい。

　　　＊

しとしとと、降りしきる雨。
朝から止む気配はなく、私は空を見つめている。
隣には、同様に空を見つめるスコール。
二人での、見張り。

「変わった様子はないわね」
「ああ」

私以上に無口なスコールと、たまに交わす会話は、単語程度かせいぜい二語文。
でもそれが苦痛になることなど、別にない。
むしろ私にとっては、必要以上のお喋りを強要される方が、余程苦痛で。
幸いにして、元の世界も今も、そんな仲間はいないけれど。

こんな場面に、例えばティーダやバッツがいれば、話は全く違って来て。
陽気で快活な彼らならば、場を盛り上げ始めるのだろう。
そんな時、スコールは時には迷惑そうに、時には困惑しつつも、無視なんて事は絶対にしない。
実際のところ、彼はかなり付き合いのいい方で、とても優しいのだと思う。

 

「ティナ」
「……え？なあに、スコール」

不意に声をかけられて、私は間を置いてしまってから、慌てて彼へ返答する。
彼の瞳が、じいっと私を見ていた。

「どうしたの？」
「いや……」

一度目を逸らし、それから再び私を見つめて。
スコールが、告げる。

「ここは俺がいるからいい。あんたは、少し休め」
「え、でも」
「いい。少し、温まって来い」

「……ありがとう」

彼の気遣いが嬉しくて、頭を下げると。
ほんの少しだけ、スコールが表情を緩ませていて。
私の心が、温まるのが、わかった。

　　　＊

今日の雨は、彼のように、優しい。




（お題配布元：恋花─こいはな─様） 

 

 

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◆【色とりどりの世界、薄紅の章】君と二人、暁にまどろむ（７×６，６視点）閲覧注意

恋花（こいはな）様から拝借したお題の７つ目に参りました。
まず、ここでお断り申し上げますが、本作は拙宅の中で一番の大人向け扱いとなってしまいました（汗）。
ぶっちゃけ『共寝した朝』ですが、管理人が苦手な分野の成人向けシーンは皆無です。
というわけで、そのまま投稿いたします。

白いシーツが、色を帯びる。

　　　＊

（ん……）

目を開いたら、最初に視界に入るのは、薄紅が映った天井。
耳に入って来るのは、穏やかで静かな寝息。
身体の向きを変えようとする度に、感じるのは緩やかな拘束。
逞しい腕と温もりに包まれている、安堵感。

（まだ、寝てるのね）

男の人にしては長い睫毛が、白い肌にうっすら影を落として。
冴え凍る月のような輝きを秘めた碧眼は、瞼に閉ざされている。
光の粒子のような金髪が、枕の上に散らばっている様子は、彼の安らいでいる証のようで。
心が温かくなる感覚に、知らず笑みが零れた。

 

「……ティナ、目が覚めてたのか……」

薄い瞼がゆっくりと持ち上がり、青い瞳に私を映して、彼は笑う。

「ごめんなさい。起こしてしまったかしら」
「いや」

寝起きの掠れ気味な声が、どきりとするような色気をかもし出していて。
少しだけ身を強張らせた私の頬をするりと撫でて、そのまま彼の端整な顔が近付く。
目を閉じて、触れるだけの優しい口付けを受け入れる。
吐息まで激しく奪い合うような、荒々しいキスよりも、こちらの方が私は好き。

（……そんな事は、言えないけれど……）

温もりと軽いリップノイズを残して、唇は離れ。

「おはよう、ティナ」
「おはよう、クラウド」

私に挨拶をしてくれた人に、笑顔と言葉を贈ってから。
彼の体温を感じたくて、私は彼に抱きついた。

「どうした？」
「ううん、何でもないの。ただ、こうしたくて」
「……そうか」

穏やかな声と、私を包み込んでくれる温もりが心地良くて。
私はゆっくり、目を閉じた。

　　　＊

もう少しだけ、このままで。

（お題配布元：恋花─こいはな─様） 

 

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◆【色とりどりの世界、薄紅の章】恋に酔う花（７×６、７視点）

恋花（こいはな）様から拝借したお題のうち、６つ目でございます。

お断りしておきますが、本作に関しては、７×６的要素がかなり高めです。
苦手な方は閲覧をご遠慮いただくよう、お願い申し上げます。

儚くも美しく、咲き誇りし花。

　　　＊

つい最近まで凍らされていた、幼い心を抱えて。
彼女は、ここへやって来た。
儚い笑顔を持った少女を、守りたいと思ったのは、必然。

同じ時間を過ごす中で、心の平穏を取り戻していき。
彼女は、綺麗になっていった。
美しい笑顔を見せるようになった少女に、恋心を抱いたのも、必然。

それは俺だけではなく、他の連中も同様で。
引き下がるべきか悩んでみても、そんな真似などできないのは、当然。

 

───そして、今。

「クラウド」

満面の笑みを湛える彼女を、抱き締める特権を得たのは、偶然ではなくて。
花の顔に唇を寄せる度に頬を染める様すら、例えようもなく愛らしい。
俺が得た、奇跡。

「ティナ」
「なあに？」

『愛している』

耳元で囁く度、俯いて言葉を失う姿すら、誰にも見せるのは躊躇われて。
俺は彼女を腕の中へ閉じ込めて、甘い唇に酔う。

永遠に、醒めぬように。

　　　＊

咲き誇れ、恋花よ。

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（お題配布元：恋花─こいはな─様）  

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◆【色とりどりの世界、黒の章】言葉なき歌い手（５＋６＋７、７視点）

恋花（こいはな）様から拝借したお題、５つ目になりますが。
このお題のイメージを拝見したとき、ちょうど５のリプレイ中だった事もあり、あっさりバッツに決定。
歴代主人公の中では印象が薄いといわれるのが、バッツなんでしょうけれど。
私は大好きなキャラクターなんですよねぇ。

かたちのない、思い出。

　　　＊

譜面も何もないけれど、繰り返し奏でられる旋律。
弾いているのが彼だとは、正直思わなかったが。
一曲が終わったとき、ほぼ無意識に拍手をした。
「！……クラウドか」
びっくりさせんなよ、と普段通りの快活な笑顔で話すバッツ。
「驚いたのは俺の方だ。あんたがピアノを弾けたとは、な」
「へっへー、これでも一応ピアノマスターだもんね！吟遊詩人もやってたしな」
俺の指摘も意に介さず、Ｖサインまで送る始末。
ほとんど年に違いはない筈なのだが、これ程までに楽天的な相手には、正直戸惑う。

ふと頭に過ぎった疑問を、口にした。
「そういえばバッツ、さっき弾いていた曲は何と言うんだ？」
「あ、さっきのか？」
うーん、と腕組みして思案する事約10秒、バッツはお手上げといった感で両手を上げて。
「悪い、わかんねーや。俺もガキの頃から耳で聞くだけの曲だったからさ」
「……そうか」
「うん。お袋が大事にしてたオルゴールに入ってた曲だったんだ。もう、誰も知らないからなー」
視線を空へ彷徨わせ、遠い目をするバッツ。
その姿は年相応、いやそれ以上の空気を作り出していて。
陽気な印象とは裏腹の、彼が隠し持つ陰の部分に触れたような、不思議な感覚。
声をかける事すら、躊躇われて。

そんな時、微妙な空気を破る声。
「あの、ごめんなさい、いいかしら」
おずおずと、躊躇いがちな小声の主は、ゆっくりとバッツへ歩み寄る。
俺でなくとも、そんなティナを見て、声をかけずにはいられなくなるのは当然で。
「ん？あれ、ティナ。何かあったの？」
バッツが慌てて尋ねると、彼女は少し俯いてから、首を傾げた。
「さっき、バッツが演奏していたのかしら、って思って」
「ああ、ピアノの事？そうだよ」
答えを告げられると、ティナの表情が輝く。
「とても素敵な音だったわ。あの、できればもう一度、弾いてもらえないかな、って思って……駄目かしら」
「え、気に入ってくれたの？」
バッツの問いかけに、珍しくティナがすぐに頷くと、バッツは目に見えて表情が輝いて。
「よっし！んじゃ、ティナに似合うような可愛い曲を弾いてやるよ！」
「……ありがとう、バッツ」
ティナまで釣られるように、笑っていた。

　　　＊

奏でられるのは、優しい想い。

（お題配布元：恋花─こいはな─様） 

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◆【色とりどりの世界、黒の章】ミスター・エクリプス（４＋６、６視点）

恋花（こいはな）様から拝借したお題の４つ目ですが…。
クラティナ要素どころか、クラウドが入る隙がなかった（汗）嗚呼乏しい文才がバレバレです。
お題文を書くことによって、コスモス勢を全員書いてみたのですが、思った以上に難しいです。
特に今ひとつ思い入れが深くできないセシル（爆）とか、ＦＣ版クリアできてないオニオン君とか。
全ては精進せねば、という一言に尽きるのですけれどね…。

光をなくした太陽のかたち。
美しくも、儚げ。

それは、あの人のようで。

　　　＊

「あなたはいつも、優しいわ」
そう言うと、セシルは常に困惑の表情を浮かべてから、笑う。
「そんなつもりはないんだよ、ティナ」
「でも、優しいの」
私は彼の言葉を否定して、続ける。
すると彼は、悲しげに微笑んだ。
「僕の経験して来た事は、後悔ばかりだよ」
え？と困惑する私に、彼は教えてくれる。
「偽りを見抜くことができず、罪もない多くの人を死なせてしまった。僕が、弱かったからだ」
「……」
彼の心に宿る憂いは、偽りの主に騙されてしまった事への、悲しみと怒りに通じているのだろう。
元の世界で、かつて仲間として戦って来た人のように、その瞳は苦しげで。
心を凍らされて操られていた私には、理解する事のできない、苦しさ。

「……セシル」
「ん？」
「それでもあなたは、逃げなかった。あなたは、強いわ」
私の言葉に、彼は目を見張る。
「ティナ」
「苦しくても、悲しくても、最後まで逃げなかったんでしょう？弱いんじゃなくて、強いの」
そう、どんなに苦しい選択を強いられても、逃げなかったのなら。
やっぱり彼は、強い。
「セシルは、弱さを知っている。だから強くて、優しいのね」
笑顔で私が告げる。

セシルは、本当に穏やかに、笑ってくれた。

　　　＊

光をなくした太陽。
でも、本当は光が少し、隠れただけ。

きらきらと輝く、本当の姿を持ってる。

彼の心が、どんな影に覆われても屈しない、光を持っているように。

（お題配布元：恋花─こいはな─様）

 

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