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拙宅ではどうも扱いが悪い(=管理人がキャラ把握できていない)10の彼ですが、陰の部分が多いように感じてしまうのが困り者です。
ということで、10本編ネタバレ的な話をばりばり書いてしまった暗い話をアップ。
更に、無駄に長くなってしまいました(汗)申し訳ありません。
で、拍手レス等は夜に再び参上後アップさせていただきます。夕飯準備が←早くしろ
絶対に、待ってる。
君は、笑った。
だから、俺も、笑った。
『泡沫夢幻な約束を』
透ける体と、触れる事ができなかった腕。
それでも貴女を守れたのだから、泡沫となってしまっても良かった。
なのにどうして俺はまた、戦っているんだろう?
(……ちょっち、ヒデー扱いっスよね)
珍しく、地べたに腰掛けて、ぼんやり考え事なんてしてた。
──ここでの戦いが終わったら、俺は、どうなる?
元々あっちの世界でも存在してなかった、『俺』は。
(やっぱし……お役御免って事、っスか?)
口元が苦く歪むのは、気のせいじゃなくて。
自分らしくもなく、空なんか仰いで溜息を零す。
(俺って、マジ何なんスか?)
「まあ、ティーダ、どうしたの?」
唐突に声をかけられたので、振り返れば。
「あれ、ティナ」
どうしたんスか?と訊ねると、相手の少女は微かに笑顔を作って。
「あ、えーと、別に急ぎの用事はないの、ごめんなさい。その、あなたがいたのを見つけたから」
自分の事を気に留めてくれた事実が嬉しくて、俺の口元はにんまりと緩む。
「暇なら少し話さないっスか?ほら、ここ座ってさ」
今座ってる場所の隣を手でポンポン叩いて座るように促すと、彼女は戸惑いながら。
「いい、の?ありがとう」
遠慮がちに俺へと近寄り、隣へ静かに腰掛けて、並んで空を見上げた。
「綺麗な空ね」
「うん、そうっスね」
ふわり、と風が通り過ぎた後俺は何となく、質問してみた。
「ティナの世界の空も、こんな風に綺麗だったっスか?」
「……そうね。前は、綺麗だった。でも……ケフカが世界を壊してしまったから、空も輝きを失ってしまったの」
寂しげに呟いて目を細める表情は、何を物語っているんだろう。
「ティーダのいた世界では、空、どうだったの?」
「俺っスか?うーん……」
俺の頭に思い描いた世界は、夢のザナルカンドではなくスピラの地。
真剣に生きて、戦って、最期まで頑張った場所。
「……綺麗だったっス。きっと今は、もっと綺麗っス」
「そう……」
ティナは微かに頷いてから、視線を俺に向ける。
「この戦いが終わったら、また見られると、いいね」
彼女がぽつりと漏らした言葉は、俺にとっては、永遠に叶わないもので。
「無理っスよ」
誰かに言うつもりなどなかったのに、零れてしまった心は溢れる。
「俺にはもう、戻る場所はないっス」
「どういう、こと?」
躊躇ったような口調で訊ねてくるティナの声が、どこか硬質だった事には、気付かず。
「……聞いて、くれるっスか」
俺が彼女に向けた笑顔は、きっと醜く歪んでた。
「………」
俺の話を黙って聞いてくれたティナは、心持ち俯いて、唇を閉じていた。
その瞳に宿る色は、悲しみとも苦しみともつかないもので。
「ゴメンな、ティナ。俺、本当は誰にも言うつもり、なかったっスよ」
俺は頭を掻きながら、わざと明るく言ってみる。
すると、自分にぶつかってくる衝撃と、柔らかな感触。
俺の胸に顔を埋める、ティナの表情は窺い知れない。
「ちょ、ティナ!どうしたっスか?」
彼女がこんな風に誰かに抱きつくの見たことがないので、俺は慌てて声をかけ、細い肩へ手を置いた。
(あ……!)
初めて気付いた小刻みに震える肩と、胸の濡れた感触。
(泣いてるっスか……ティナ)
少女の優しさと、それに甘えて弱音を吐いた自分に溜息。
「ホントにゴメン、ティナ。俺が変な事、言っちまったから」
「……ち、が……」
ティナの声は、明確には聞き取れなかったけど、確かに否定の意思を告げていて。
そっと顔を上げた彼女の、震える唇が、告げた。
「違う、の、ティーダ……ごめん、なさい。わた、しも……私も同じなの」
世界を壊した元凶を滅ぼすのと引き換えの、自らの消滅。
俺と同じ、苦悩を超えて。
「こわい、の」
ティナは宝石のような瞳を潤ませ、ぽろぽろ雫を零しながら、呟く。
「戻る場所は、あるのかな、って。帰りを待って、くれてる人は、いるのかな。って……いつも」
「俺と、一緒っス……」
「うん……」
震えるティナを抱き締めて、俺の視界もぼんやりと輪郭が滲む。
同じ苦しみと、悲しみと、恐怖を持つ、痛み。
違う世界から来た同志の、世界にふたりだけの、同じ感情。
それは奇跡か偶然か、そんな事はどうでも良くて。
互いの温もりを分け合って、今ひと時を確かめる。
この世界では、確かに自分たちは、ここにいる、と。
「……ティーダ」
「何っスか?」
どれだけの時間が経過したのか、見ればティナは涙を納め、微笑していた。
「あのね、思いついたの、私」
泣き腫らした目がほんのり赤みを帯びてはいるが、その表情は穏やかで。
「私たち、また、一緒にいましょう」
「へ?」
「元の世界に戻るんじゃないの。ふたりがまた、別の場所に行って、一緒にいるの」
ね?と首を傾げる彼女の瞳から、ころりと涙がひと雫。
それでも笑みを作る少女の気丈さに、俺は何も言えなくて。
「きっと、叶うわ。だって、私たち、ここで出会えたんだから」
「ティ……、ナ」
「私、待ってる。どこかで貴方の事、絶対に待ってる。だから、ね?」
それはあまりに儚い、だけど今の俺たちにとって、縋りつきたくなる願いで。
何よりティナは、笑っていたから。
俺は声すら出せなかったけれど、頷いて、笑い返した。
*
叶わない事、わかっていても。
夢より儚い願いでも、きっと心の力になるから。
終わりが来るまで、信じさせて。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。