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どちらかと言えば2+6、もしくは2→6的な小噺をひとつ。
ふたりの共通点は『強大な力への反逆』でしょうか?
故郷を焼かれ、家族(フリオにとっては養父母)を奪われたところまでは、一緒ですが。
自らの意思で反乱軍に入ったのと、ただ周囲に流されるように巻き込まれたのは、かなり違いますね。
フリオが抱く愛情には、兄妹愛というか、そんなものがあってもいいように思います。
抱き寄せた肌は、冷たくて。
思わず両腕に力を込めて、細い体を引き寄せた。
少しでも、温もりを伝えたくて。
『心解ける、その時まで』
戦う事だけが、生存理由だった、と。
悲しげな笑顔で告げた、あの時は、忘れられない。
人が戦いを選ぶ理由は、それこそ千差万別で。
自らのため、家族や恋人や友のため、故郷のため、他にも色々。
だけど、ティナは。
「……たくさん、壊したの」
自らの両手を見つめながら、自嘲気味に呟く瞳には、深い悔恨の色。
「人たちも、人が作ったモノたちも、たくさん」
「ティナ」
「何も知らなかったし、考えてもいなかった。ただ『壊せ』と、その言葉だけが、私の全てで」
伏せられた瞳を縁取る、長い睫毛がふるりと揺れる。
この世のものとは思われない程に、綺麗な少女。
なのに、自らも持て余すような強大な魔力をその身に宿して生を受けた、そのために。
意思や感情を封じ込められ、ただ力のみを行使させられる日々を過ごして来た。
少女の表情が硬くぎこちないものだったのは、長年その状況下に置かれていたために、極端に経験に乏しいから。
やんわりと質した事情に、ぽつりと答えたその事実は、あまりにも重く。
「言葉が、みつからないよ」
「……ああ……」
魔物が摩り替わった偽の国王に騙され、不要な殺戮を繰り返した負い目のある、聖騎士と。
数年の空白と記憶の混乱を経験したことのある男が、嘆息していた姿が、鮮明に蘇る。
「過ちを償うとは言っても、当時のティナが意思を持って破壊をしていたわけではないのに、ね」
「それでも……己を許せないのだろうな、ティナは」
「悲しい程に強くて生真面目で、潔い子だよ。償いのために、その命も平気で投げ出しかねないから」
今も両手に視線を落としたまま、ティナは口元を微かに歪めて。
そこにあるのは微笑ではなく、苦悩。
本当なら、自らの境遇を嘆き悲しみ、涙を零すことだってあって当然なのに。
涙を流す事すら許されない場所で、生きてきたひと。
「……っ」
衝動のみの、なせる業か。
女性に対しては極端に奥手な自分がなぜ、と後から思い返せば顔から火を噴きそうな。
「フリオニール?」
ティナの華奢な体躯は、自分の両腕で包み込めてしまう。
でも、その白磁のような滑らかな肌が、どこか冷たく感じられて。
自分にできたのは、腕に力を込めるだけ。
この行動に、邪な他意はない。
ただ、今ひとときだけでも、ティナの苦しさを少しだけでも和らげたいと、そう思って。
体が自然に、動いてしまっただけ。
「フリオニール、ありがとう」
腕の中、ティナは静かに頭を俺の肩に凭れかけさせ、囁く。
「あたたかいわ。人は、こんなに温かいのね」
「ティナ」
「私を人として扱ってくれて、温もりをくれて、ありがとう」
腕の間からちらりと覗く、ティナの表情は穏やかで。
まるで、父親に抱き締められて安らぐ、幼い少女のそれ。
通常のスキンシップ─握手などで人に触れる事すら恐れるティナの、その生活経験の乏しさに。
幼子そのもののように、温もりを享受する無垢な心に、胸が熱くなって。
今しばらくの間だけ、少女が安らいでいてくれる事を、祈った。
*
いつか、心のままに泣けるように、と思う。
きっと少女の涙の雫は、温かくて。
ぎこちなく固まった心を、解いてくれると思うから。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。