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他のカップリングをお求めの方、申し訳ありません。
……と申し上げつつもまた7×6……
お読みいただく前に、注意点を。
少女の設定に関しては、管理人の捏造に基づくものであり、公式その他とは無関係です。
更に、無駄に長いですが、その点も含めご了承願います。
紅い記憶は、どこか曖昧なままに。
いつも、私を苦しめる。
きっと、世界の終わりの時まで。
*
新月の夜だから特別明るいわけじゃないのに、目が冴えて眠れない。
(……ダメね。私、また……)
溜息をひとつ零して、そうっと寝床から抜け出す。
見張りをしている誰かに気を遣わせないよう、そっと離れて。
満天の星が輝く様を眺めつつ、ちょうど見つけた大きな岩に腰掛ける。
時折吹く風に髪を弄ばれるのが、不思議と心地良い。
「ティナ」
唐突に呼ばれて振り返れば、腕を組み眉を顰めているクラウドと目が合った。
「クラウド。どうして気付いたの」
私の問いかけに、彼は肩を竦めて「たまたま見かけた」と答えたうえで。
「全くあんたは懲りない女だな。単独行動は避けろ、前にもそう言った筈だ」
「……ごめんなさい。何だか、眠れなくて」
溜息混じりの憮然とした声に怒りを感じ取り、素直に謝ると。
ゆっくり歩み寄って来た彼は、不意に私を抱き上げて、同じ場所へ腰を下ろした。
「!」
気が動転してしまった私は、慌てて彼の服へとしがみ付く。
そんな私の態度がおかしかったのか、彼はほんの少しだけ笑った。
「驚いたか?悪かった。だが、あんたは浮遊の呪文だって使えるだろう」
「だって、突然だったから。でも凄いわ、人ひとりを楽に抱え上げられるなんて」
「俺の得物が得物だし、それなりに鍛えてはいる。何よりあんたは軽いからな」
クラウドは事もなげに言って、付け足した。
「言わせてもらうが、むしろあんたが兵士だったという方が脅威的だな」
『兵士』。
その言葉は、私の頭の中をぐるぐると廻る。
確かに、私は。
……いいえ、私は。
「正確には、違うわ」
「ティナ?」
怪訝そうになったクラウドに、私は微笑した。
「本当は兵士じゃなくて、兵器。帝国の最重要機密にして、脅威の象徴。それが私」
「……兵器……」
クラウドが発した言葉に、頷く。
「体術も剣術も、一通り訓練は受けたわ。でも、白兵戦より魔導アーマーへ搭乗しての任務が圧倒的に多かった」
「魔導、アーマー?」
「私たちの世界の兵器。魔導の力がなくとも操作はできるけど、全ての性能を引き出せたのは、私だけ」
そう、ぼんやりと、でも間違いなく思い出した光景。
ガストラが許可した時だけ、ケフカに格納庫まで連れて行かれて。
冷たい機械に抱かれて、たくさん壊して、たくさん殺した。
アーマーの上から見下ろす世界は、炎と煙を放つ瓦礫の山と、死体の山。
あの惨状を生み出したのは、私。
「……、おい、ティナ」
「!?」
がくがくと身体を揺す振られ、覚醒すると、クラウドの真剣な表情と硬い声。
「どうしたの」
「それは俺の台詞だ。あんた、震えてる」
「え……」
彼に指摘されて、初めて気付いた自分の身体の震えに、戸惑う。
どうしてだろう。
ただ、思い出してしまった、それだけなのに。
急にクラウドが、震えるままの私をぎゅうっと抱き締めて。
自然に、彼の肩口に顔を埋める格好になった。
(クラウドの、心臓の、音……)
肌を通して伝わって来る心音が、心地良く感じられて、目を閉じる。
悪夢のような紅い記憶は、ゆっくりと沈んでいく。
そう、だってここは、帝国じゃなくて。
「……落ち着いたか」
クラウドの囁く声に、初めて自分の震えが治まったことを理解した。
目を開けて顔を上げると、至近距離でクラウドと目が合う。
実験の結果だと彼が言っていた、不思議な青い色の瞳が、私を射るように見つめていた。
「以前のような力の暴走ではなさそうだが、大丈夫か」
「ええ、多分。ごめんなさい、私、戻るわ」
私は両手を彼の胸に当て、立ち上がろうとしたけれど、クラウドはそれを許さない。
更に強く力を込めて、私をきつく抱き締めた。
「クラウド?」
「あんたはまた1人で抱え込もうとするのか?」
私の背に回した腕の力を強め、彼は続ける。
「抱え込むのが辛い程の記憶なら、話せ。俺は信用できないか」
「…………いいえ、違う。あなたは、仲間」
「なら、話せ」
命令するかのような強い口調は、迷う私の背中を押すためで。
どこまでもさり気なく優しい彼に、甘えてしまう自分が口惜しい。
「……話すわ」
記憶のままに話し終えると、クラウドは静かに目を伏せてから私をじっと見つめる。
私は胸が苦しくなって、無理矢理視線を逸らした。
すると、彼の手が私の頬をそうっと包み込み、彼の方に向くよう促して。
「ティナ」
静かに話すクラウドの口調は、どこまでも穏やか。
「あんたの記憶の中にあった過去は、あんたの意思によるものじゃないんだろう?ならば、あまり気に病むな」
「……できないわ」
「どうして」
詰るような鋭さはなく、穏やかに問いかける言葉の優しさが、苦しい。
私の視界がぼやけ、声が掠れる。
「あれは、間違いなく私。だから、忘れちゃ、駄目」
「ティナ……」
「だって、たくさん壊して、たくさん、殺した。私の手、もう、ずっと紅いまま」
ああ、止まらない、言葉も涙も。
止めなきゃいけないのに、ぽろぽろぽろぽろ、零れ落ちてく。
「ティナ、もうよせ」
「みんなに、謝らなきゃ。ずっと、謝らなきゃ。たくさん、死んじゃったのに、私、生き、て」
「もういい、ティナ!」
クラウドが低く鋭く、一声叫んで。
次の瞬間。
クラウドの薄い唇が、私のそれに重なった。
長い時間に感じられたけれど、本当は刹那の間だったのかもしれない。
クラウドはゆっくりと私から唇を離し、今度は目元に唇を落として、溢れたままの涙を吸い取った。
私は何が起こったのかも理解できないまま、半ば放心状態で、されるがままになっていて。
そんな私をどう思ったのか、クラウドは私に視線を合わせたまま、微笑む。
「すまなかったな」
「……いいえ。それよりも、私こそごめんなさい、取り乱してしまって」
「問題ない。そんな事より、嫌じゃなかったのか?あんた」
「?いいえ、何も……」
私は静かに首を振り、そっと視線を外してから、さっき触れられたばかりの唇に指で触れる。
そこにはもう、先程の温もりの名残りはなくて。
でも、確かに今のは。
(………………!!)
現在の状況を遅まきながら把握すると、全身から湯気が上がるんじゃないかと思うぐらい肌が上気して。
私はどうすればいいのかわからず、思わずクラウドに視線を戻す。
すると、彼は先程と同じ微笑で、そっと頬に触れてから。
「……な」
私の耳に届かぬぐらい小さな声で、呟いた。
「今、何て」
思わず聞き返すと、彼は当惑気味に視線を彷徨わせてから、笑みを深めて。
耳元に口付けるかのように、唇を寄せてから、教えてくれた。
『最高機密と謳われたなんて信じられない程、あんたは初心で可愛いな』
*
私の頬が更に上気したのは、彼と私だけの秘密にしておくつもり。
苦しくて、悲しくて、紅い記憶は大嫌いだけど。
今の私が持つ紅は、嫌いじゃない気が、する。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。