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相変わらずティナに関する捏造設定の嵐ですが、どうぞご容赦を。
生後間もなく帝国に捕らえられているはずなのですが、子守唄ぐらいは記憶に残っているといいなあ、と妄想。
バッツは気の強い女の子ばかりと一緒に旅をしてきてますから、ティナのような子はむしろ扱いにくいかな?
不思議だね。
君はちゃんと、人なのに。
人じゃないような、気がしてる。
『君の背中に白い羽』
岩場に腰掛け風を感じて、目を閉じる。
不思議と安らげる、ひと時。
「バッツ?」
声をかけられて目を開けると、目の前にふわりと靡く髪。
「ティナ。どうかしたか?」
「うん。あのね、今、いい?」
おどおどした調子の少女へ、にんまりと笑みを浮かべながら隣を進めると。
微かに表情を綻ばせ、鈴を振るかのような声が「ありがとう」と囁いた。
(……それにしても)
隣に腰掛けた横顔を眺め、やっぱり綺麗だよなあ、と思う。
元々いた世界も思考もまるで違う仲間たちの間でも、それは共通した意見。
ジタンなんぞは『人類の至宝』なんて表現し、あのウォーリアですら素直に認める程の美形。
厄介な事に、敵方の、彼女と同じ世界から来たあの道化以外の輩にまで、その美貌は知られていて。
支配者面を振りかざした金ピカ野郎が、ふざけた台詞を吐いていたのはいただけない。
騎士を自称したオニオンナイトならずとも、守ってやらねば!と心中拳を高く突き上げた仲間は……全員だ。
と、彼女の長い睫毛が微風に揺れたのを、目で追っていたならば。
不意にティナが、こちらを振り向いた。
「うわ!?」
「あ……ご、ごめんなさい」
麗しのサファイアがこちらを向いた事に焦ってのけぞってしまった自分を見て、ティナが俯いてしまう。
(万が一にも、この状態をオニオンに見咎められたりしたら……。)
名前はプリティでも破壊力甚大な、プチメテオの嵐は勘弁してもらいたい。
おまけにウォーリアやセシルが居合わせようものならば、彼らのシヴァより冷たい視線が必殺技込みで待っていて。
更にボコ、もといクラウドがバスターソードを翳し、覚悟はいいかと目で迫るのだ。
(早く何とかしないと、俺、マジで死ぬ!)
俺は必死でティナに声をかけ、事態の打開を図った。
「ちょ、ティナは何も悪い事してないから謝る必要ないって!そそ、そうだ、俺のトコに用事で来たんだろ?何があったんだ?」
「……あ……。そうだったわ、うん。ごめんなさい、えーと、ね」
見た目と違い、純真な子供のような素直さを持つティナは、案外簡単に話に乗ってくれて。
俺の言葉ではっとしたのか、再び俯いて、自分が話すべき言葉を探し始めた。
「ティナ、ゆっくりでいいからな。自分が納得できる言葉が見つかってから、話してくれよな」
彼女が焦ってしまわないように、と、俺は慌てて言い添えると。
「……うん。ありがとう、バッツ」
ティナは蕾が花開くように、ほっこりと微笑んでくれて。
我知らず、心臓が喧しい程に高鳴るのを自覚した。
言葉を探しているらしいティナの表情は、本当に幼い少女のようだ。
仲間の間でも抜群に高い魔法力を持ち、洗練された身のこなしは例えるならば軍人のよう。
戦闘経験も豊富らしく、元々装備していた剣の捌きだって申し分なかった。
「元の世界では……『魔導戦士』だったから」
誰かの問いに、悲しげに告げた姿が印象的で、以後皆事情を聞けずにいる。
それでいて、他者とのコミュニケーションに不慣れなのか、こんな風に会話をする時戸惑う事が数多い。
理由についてはいつか聞かねばならないのかも、とぼんやり思いつつ。
(できれば……悲しい顔なんて、して欲しくはないよなぁ)
『笑って欲しい』それが仲間たちの共通の願い。
そんな俺の考えなど気にかけてはいないだろうが、ティナが漸く顔を上げる。
いい言葉を見つけたのだろう、瞳がきらきら輝いていて、まさに宝石のようだった。
「あのね、バッツ。その、あなたが、元の世界で色んなジョブについていた、って聞いたの」
あの子みたいに、とオニオンの名を挙げたので、俺はああ、と頷く。
お互いのジョブについてなど、何度も話したから、ティナはあいつから話を聞いたのだろうと理解した。
「いろいろできるけど、どうかしたのか?何か困った事でもあった?ティナ」
すると彼女はこちらを見つめて、はっきりと言った。
「それで、吟遊詩人もできるでしょう?だから……楽器、教えてもらいたいの」
聞けば、ティナが頭の中だけで覚えているメロディーを、曲に表してみたいそうで。
俺は快く承知して、さっそく竪琴を具現化させてかき鳴らす。
「綺麗な音ね」
ティナが微笑むのが嬉しくて、俺は上機嫌でそれを彼女に手渡し、もうひとつ竪琴を具現化させる。
「んじゃ、始めようぜ。いいか、まず基本の音から鳴らしてみるぞ?」
「ええ」
───それから、数刻。
ティナは簡単な楽曲を奏でられるまでに腕を上げ、満足げに竪琴を置いた。
「……凄い。バッツのおかげね、ありがとう」
「いーや、ティナが真面目に頑張ったからだよ。それにしても上達が早いなぁ」
何かやった事あんのか?と軽い調子で問いかけると、彼女は悲しげな笑顔で首を振る。
「全然ないわ。私、戦うことしかしてなかったから……」
(やばっ!)
俺はまたも地雷を踏んだ事を自覚し、慌てて空気を変えようとした。
「じゃ、じゃあこれから覚えよう!」
「え?」
「今まで勉強する機会がなかったんなら、これから色々覚えればいいんだよ。な!」
首を傾げたティナに、俺は引き攣った笑顔のままで告げた。
すると、目を白黒させていたティナは、やがて口元に微かな笑みを浮かべ。
「……うん。ありがとう、バッツ」
彼女の精一杯であろう笑顔を向けてくれたので、俺の心もじんわりと温まる。
「で、肝心の『頭の中にある音楽』はできそう?」
「ええ、たぶん。今演奏してみるわ、聴いてもらえる?」
ティナの期待と不安が入り混じった表情に、俺じゃなくとも絶対逆らえないよなあ、何て頭の片隅で思いつつ。
「勿論さ!むしろ、俺が最初に聴かせて貰えるんだろ、ありがとな!」
満面の笑顔で答えて、ティナの事も笑顔にする事ができた。
細い指で奏で始めたのは、耳にした事のない旋律が繰り返される、不思議な音楽。
更に続けて、細くて綺麗なコーラスまでがついて来る。
(ティナって、歌声もこんなに綺麗なんだなぁ)
目を閉じて耳を澄まし、皆に先んじて貴重な歌声を聴くことができた役得を、今更ながらに感じていると。
やがて、ふっと音が途切れた。
「……ティナ?」
ゆっくり目を開けると、目の前のティナの様子が一変。
竪琴をきゅ、と握り、空を見上げて、瞳は少し潤んでいて。
「大丈夫か?」
そっと声をかけると、彼女は空を見上げたまま、呟く。
「……おかあさん、だわ」
「え?」
「思い出したの。おかあさんが、歌ってくれた、歌なのね……きっと」
潤んだ瞳のまま口元を綻ばせたティナは、不思議ととても嬉しそうで。
「……今の歌?」
「ええ。顔も覚えていないけれど、きっとそう。こんな風に、空を見ながら、歌ってくれたわ」
ティナはゆっくりと目を閉じて、記憶を反芻しているようで。
その様子が、あまりに嬉しそうに思えたから、俺は声をかけられなかった。
やがてティナは瞼を開き、俺に竪琴を差し出した。
「バッツ、ありがとう」
ふんわりと微笑む様子は、見たことがないぐらいに綺麗で。
俺はうっかり頬が紅くなるのを自覚しつつも、竪琴を受け取った。
ティナが「また教えてね」と言ってから去っていくのを、曖昧に頷きながら、ぼんやりと目で追う。
華奢な背中にふんわりと弾む柔らかな髪が、太陽に照らされて輝く。
夢のように綺麗なその光景が、現実であるとは思えなくて。
(……やっぱりティナって、人じゃないかも……)
どこかぼんやりした思考の中で、考える。
幻でも見ているかのような、どこまでも儚げな美しさが。
現実のものだとは、思えなくて。
その時、強い風に吹かれて、ティナの髪がふわり、と舞い上がって。
露わになった小さな背に、光が差し込む。
(……あ!)
俺は思わず、息を飲んだ。
彼女の背中から、白い羽が生えているように見えたから。
*
天使なんかじゃないのにね。
君はあまりに綺麗過ぎて、僕はいつも、惑わされる。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。