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でも幸せ要素がない、という体たらく。どうしてこうなった(汗)
更に、無駄に長いだとか、微妙に4ぽい人が見え隠れしていたりだとか、現代チックで妙な小噺と化しています。
どうぞご容赦願います。
※現代パラレル的な要素がありますので、苦手なお客様は閲覧をご遠慮願います。
偶然を装って。
*
大学の講義帰りの彼女を、愛車に寄り掛かり待ち伏せ。
「ティナ」
「!……クラウド、久し振りね」
ふわりと微笑む端整な顔に、陰りが見えたのは気のせいではないのだろう。
「今日バイトは?」
気づかぬ振りをして、話を続けた。
「お休みなの。だからもう帰るだけ」
「送るぞ、乗れ」
ありがとう、と素直に応じた彼女を助手席へ押し込み、走り出す。
「明日の講義は?」
「午後からよ。3時間目だけなの」
「そうか、俺と一緒だな」
ぽつぽつと雑談を交わしつつ、ティナの住まうアパートが近づいて。
「あ、クラウド、私もうこの先の信号で、」
彼女が俺を気遣って、車を停車させようと声を上げたのを。
「ティナ」
俺は、咄嗟に遮る。
「?なあに、クラウド」
首を傾げたティナに向き合って、口を開き。
「行きたい場所はないか」
「え?」
「今日、あんたの誕生日だろう」
日帰り可能な範囲でなら、どこでも連れてってやるぞ、と。
彼女が車を停めようとした箇所を過ぎてから、告げる。
「………………じゃあ、ね」
逡巡したティナが告げた場所は、真夏に出掛けた海岸。
俺や彼女も含めた、男女数名での日帰りレジャーは、それなりに楽しくて。
彼女の交際相手だった男も勿論いて、あの時はまだ、ふたりは幸せそうに笑い合っていた、筈。
(あいつがティナを手放すとは、到底思えなかったな)
良家の子息として生まれ育った男は、素直な性根の優しい男で、ティナをそれは大切にしていて。
昔から知っていた彼女が恋に落ちた事を、苦しいながらも祝福できた。
それなのに、当人からもたらされた「別れた」という知らせ。
『何があった』
『……婚約、することに』
常日頃から温和な笑みを称えた印象が強かった男の顔が、見る影もない程に歪んだ笑みに変わっていて。
そこに見えたのは、諦め。
『家同士の取り決めらしくてね。僕にも、どうしようもなかった』
『……そうか』
同じ学部に所属していた男が、家業を継ぐためという名目で中退したのは、先週。
かける言葉も見つからぬままに迎えた別れの日、あいつは俺に。
『クラウド。ティナを、頼む』
ひと言だけ告げて、背を向けた。
夕暮れの海辺、並んで眺めるのは沈みゆく太陽。
「寒くないか」
「ええ、大丈夫。ありがとう」
自販機で購入した缶の紅茶を片手に、ティナは微笑んで。
夕日を浴びた唇は、グロスのせいかきらきらと輝いていた。
「綺麗ね」
「ああ」
「……ねえ、クラウド」
視線を海へと向けたまま、ティナがそっと口を開く。
「セシルは、幸せになれると思う?」
「……さあな」
答えようのない問いかけに、肩を竦めるぐらいしかできない俺。
そんな俺の態度も気にすることなく、隣の彼女は話し続ける。
「私は、幸せになれると、思うの」
「……」
「とても優しいひとだったから。とても大切に、ひとを、想ってくれる、から」
語尾が、微かに震えた。
「……だと、いいな」
「!」
細い肩を引き寄せて、己へと寄り掛からせる。
これ以上、見ていられなくて。
「あいつの代わりは務まらないかもしれないが、肩ぐらい貸す」
「……っ」
「俺は、あんたの傍を離れない。一緒にいるから」
だから頼れ、と、小さな耳へと囁いて、震える背に手を回すと。
ティナの小さな手が、ぎゅっと俺のジャケットの裾を握った。
「ふっ……、う……」
漏れる嗚咽を聞きながら、華奢な背中をそっとさすって。
悲しみが少しでも、流れて行ってしまうように、と祈った。
*
少しでも悲しみが、流れたら。
君が生まれた今日を、祝うよ。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。