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ティナ誕生日当日には全くネタが浮かばず、悶々と過ごした管理人です。
2日遅れのティナ誕生日記念小噺は、まさかのパラレル設定(笑)です。
突っ込みドコロは満載ですが、どうぞご容赦願います。
『シンデレラを捕まえる』
(……全く以って、最悪なタイミングだったな)
溜息混じりに、歩みを速める。
先月末からずっとツアーで多忙になり、3週間は帰宅できていなかった自分。
荒れ放題であろう室内も、当然気にかかっているのだけれど、一番は。
隣に住まう、成り立て間もない可愛い恋人に、会えないこと。
更に、もうひとつ。
(せっかくの、付き合ってから最初の記念日だというのに!)
一昨日が、記念すべき彼女の誕生日であったのだけれど。
ツアー最終日と重なってしまったことが、最大の不運。
メールで何とか『誕生日おめでとう』とひと言送るのが、精一杯で。
彼女への溢れんばかりの想いやら、愛情やらを、欠片も示すことができなかった。
早く、早く。
一刻も早く、あの子の元へ。
(幸い、いい品が見つかった)
無事プレゼントも入手でき、後はただ、自分が彼女へ告げるだけ。
大事な、ことばを。
*
帰宅後、自宅の玄関に乱雑に荷物を放り出し、贈り物と携帯だけを携えて。
隣室のインターフォンを慣らせば、小鳥が囀るかのような柔らかい声。
「ティナ、俺だ」
「クラウド!お帰りなさい」
「……ただいま」
満面の笑みで出迎えてくれたティナへ、精一杯の笑みと頬へのキスを贈って。
既に自宅並みに泊まっている家に、足を踏み入れる。
「今日は、あなたの好きそうなものをたくさん作ってみたの」
テーブルに並べられた料理の数々は、どれも美味しそうな香りを漂わせて。
彼女がその腕を存分に振るい、自分を迎えてくれている事が、一目瞭然。
「すまない……あ、いや、ありがとう」
「!ど、どう致しまして。じゃ、いただきましょう?」
すっかり気の緩んだであろう表情で、礼を述べたせいか。
目の前の恋人が、少しだけ頬を赤らめた様が、可愛らしくて目を細めた。
「美味い」
「本当?良かった、そう言って貰えて」
安堵の吐息をつくティナに、念押しするように頷いて、俺はまた料理に手を伸ばす。
彼女と付き合う以前の自分の食事といえば、外食を除けばコンビニ食やレトルトで。
愛情こもった手料理、なんていうカテゴリとは無縁だったから。
こんな風に、食卓を囲むひとときを、そこはかとなく味わっている現在が。
例えようもない程に、幸福。
(周囲が呆れるのも、当然か)
幸せオーラがダダ漏れだ、だの、顔の筋肉緩みっぱなし、だの。
バンド仲間からの揶揄めいた祝福は、耳にタコが数珠繋ぎになる程聞いた。
現在フリーの奴らはともかく、婚約中のザックスにまでからかわれるのは不本意だが。
……あいつだって、周囲をフリーズさせる程に、エアリスとは熱々なのだし。
そんな他愛もない事を考えつつも、俺の手は料理を口に運ぶため、ひたすら動く。
「ティナ、これもすごく美味い」
「本当に?わあ、良かった。初めて作ってみたから、ちょっと自信がなくって」
料理家のアシスタントとして、常に料理に親しむ彼女が。
自分のために、新たなチャレンジをしてくれるという事実に、また嬉しさが募り。
通常は無表情だと言われる程に、俺の表情筋の活動は少ないのだが。
今日は、ひたすら弛緩しっぱなしだ。
ティナの手料理を堪能した後は、俺が持ち込んだ酒で、改めて乾杯。
「美味しいわ、思ったより爽やかな味なのね」
「グレープフルーツだからだろうな。アルコールも案外軽い」
「美味しいわ。それにしても、このボトル……すごく綺麗ね!」
ありがとうクラウド、と、砂糖菓子のように甘い声で囁き。
酒のせいで上気した頬のまま、ふんわり笑うティナは、ひたすら可愛い。
多少は気も緩んでいるのだろう、いつものようなポニーテールではない、揺れる髪を。
にやけ顔で指に絡めつつ、俺は幸福感に浸っていた。
(本当に、幸運だった)
俺たちの目の前で、部屋の照明に照らされて輝く、『シンデレラシュー』のボトル。
金の刻印で『Happy Birthday Tina』と記されたそれは、エアリスのアイディア。
『女の子なら確実に落ちるからっ!絶対コレよ、クラウド!』と。
自分も欲しいのだろうか、やけにあいつが推していた商品を、一応入手していたが。
実際にティナが、少女のようにはしゃいでいた様を見て、正解だったと思う。
そんな折、不意に感じる、柔らかい重み。
気がつけば、ティナがゆっくりと俺に凭れかかって、こちらをじっと見上げていた。
「ティナ?」
酔いが回ったのか、と懸念しつつ名を呼べば、彼女はゆっくり口を開いて。
「……あのね、クラウド」
酒のためだろう、普段とは違う甘えたような口調に、思わず生唾を飲み込む。
「どうした?」
なるべく平静を装いつつ、そっと肩を抱き寄せて、続きを促せば。
一度目を伏せて視線を逸らすものだから、長い睫毛が震える様が見て取れて。
心臓が大きく跳ねた自分にも、酔いが回ったのだろう、と自覚する。
「なあ、ティナ、教えて」
「……っ」
唇を耳元へ近づけ、囁きを落とすと、華奢な肩が小刻みに震えた。
その可愛らしい動揺は、俺の理性をかき乱すには、十分過ぎて。
やがて、震える唇が。
「……ありがとう、クラウド」
貴方にお祝いして貰えたのが、最高のプレゼントだわ、と。
はにかみながら、ティナが輝く笑みで、告げるから。
衝動に駆られ、俺が彼女へキスを贈ってしまったのも、どうか許して貰いたい。
*
硝子の靴を贈られて、綺麗、と微笑んだ少女へ。
硝子の靴ではなく、誓いの指輪を、いつか贈るために。
俺は、愛し続ける。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。