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これもありがちなネタで恐縮です…今読み返すと恥ずかしいものですね。
浮かぶのは、いつも笑顔。
出会った頃は、表情といえるものがほとんどなく、精巧な仮面を連想させていたけど。
表情も、感情も、全て閉ざされていたと知り。
開かれていく瞳に、目覚めていく心に、喜びを覚え。
柔らかい微笑みに、魅せられて。
……もう、離れられない。
*
「……はぁ」
俺は宿のベッドの上で、ひとり盛大に溜息。同室の人間たちは、未だパブで盛り上がっている。
「ったく、カイエンもなぁ。サムライとか言ってるくせに、あれじゃ単なる酒好きなオッサンじゃねぇかっての。エドガーは相変わらず、底なしだしよぉ」
ちょっとだけ、毒づいてみせる。
とはいえ俺もつい先程まで、同じように盛り上がってたんだから、あまり人の事なんて言えない。
単に、ちょっと飲み過ぎたから早めに上がってきただけで。
酒でウサ晴らし、なんて手段しか使えないような年長者のカイエンの事は、ただもう不憫で。
あまり悪い事も言えない。
「もう、寝ちまおうか……」
呟いて、ふとティナの事が気になった。
ティナはあまり、大勢の人が集まる場所を好まない。
自分の髪が、その容姿が、人目を引くから。
普通の人のように会話を楽しむ事も、まだ得意じゃないから。
俺も、ティナが人目につくのは好きじゃない。
ティナは、綺麗すぎるから。
言い寄ってくる男が多過ぎて。
……単に、妬いてるだけか?
「ティナ、まだ起きてる?」
そっと隣室をノックする。
今日の彼女は、一人部屋。
少し間があって、そっとドアが開いた。
「ロック、下にいたんじゃなかったの?」
小首を傾げる仕草が、たまらなく愛らしい。
俺、病気かも。
「いや、今日はもうギブアップ。カイエンもエドガーも、水みたいにかぱかぱグラスを空けちまうんだぜ。あんなのには俺、とってもついてけないよ」
苦笑交じりに言うと、ティナがくすっと笑みを漏らした。
「どうした?」
尋ねると、微笑んだままで答えてくれた。
「いつだったかな、マッシュも同じようなこと言ってた。『カイエンと兄貴のペースに付き合ってたら、身が持たねぇや』って」
「へぇ、あんなにでかい図体してんのになぁ?」
俺の答えは、ティナに新たな笑みをもたらした。
「修行中はお酒飲めなかったから、弱くなったんだって、言ってたの。そのときね、ロックもお酒強いって、マッシュが話してたけど?」
ティナは扉を大きく開けて、俺を室内に招き入れてくれた。
野郎3人で使ってる部屋と、ティナの部屋は全く違う。
なんて言うか、空気が。
漂う香りは、何だろう?と思っていると。
ティナが部屋備え付けの茶器で茶を淹れてくれて、茶葉の香りだったのか、と思い当たる。
「このお茶ね、マッシュがくれたの」
ティナは、すっとカップを俺に差し出してくれた。
仄かな花の香りが混じる。
一口すすると、酔ってぼうっとしていた頭がすっきりしてきた。
「気分が落ち着くんだって。私、これが好きなの。ロックは?」
「うん……美味いよ」
「良かった」
ティナの安堵した顔が何だか嬉しくて、ほんわかした気持ちになる。
不思議と感じる、満ち足りた気分。
「さんきゅ、ティナ。美味かったよ、ごちそうさん」
俺が言うと、ティナは「どういたしまして」と微笑み、さっと茶器を片づけていた。
出会った当時は一般常識など全くなく、こんなことできなかったのに。
元来器用なんだろう、日常生活でひととおりのことは、全てできるまでに成長していた。
「さて、と。俺はもう寝ようかな。ティナももう寝るだろ?」
「うん。じゃあ、ロック、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
俺はティナの部屋から、自分の部屋に戻った。
不思議に暖かな、気持ちのままで。
カイエンとエドガーは、まだ戻っていない。
階下の喧騒も、もうしばらく続きそうだ。
しかし悪いが、俺は待っている気なんて全くない。
とっとと眠ることにした。
ベッドにもぐりこむと、程好い睡魔が襲って来て。
俺はたまらず、目を閉じた。
あの、お茶のおかげかもしれない。
それと……ティナの、笑顔。
今夜は、ティナの夢を見られるだろうか……。
しかしそんなときは、ほぼ間違いなく邪魔が入る。
「いやー、もう飲めない、降参でござるよ!流石はエドガー殿でござるな」
「いやいや、カイエン殿もお見事ですよ」
酔っ払い野郎ふたりが、ちょうど間の悪いタイミングで部屋に戻って来てしまった。
結果は……。
「ロック、少し飲み直そう!」
「そうでござる!男同士で親睦を深めるためにも、さあ一献!」
… …頼むから、寝かせてくれっての!
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。