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一話で無理矢理話を纏めたのがイカンのか、ちょっと微妙な出来栄えですな(汗)
現代パラレル設定につき、苦手な方は閲覧をご遠慮願います。
夏休み、と言えば世間一般の高校3年生は、当然の如く受験勉強一色で。
アルバイトなぞ、持っての外。
……の、はずだが。
「今日からよろしくお願いします」
にこやかな笑みで頭を下げれば、トレードマークのポニーテールがふわりと揺れる。
「こちらこそ、頼むよ、ティナちゃん」
「お店に新しいお花が咲いたみたいねえ、嬉しいわ」
相好を崩す両親(特に親父)の様子はまあ、無理もないだろう。
俺が今春卒業した高校は、今日から夏休みに入って。
予てから約束していた通り、園芸部の後輩だったティナが、店の手伝いにやって来たのだ。
「ティナ、本当に無理はしないでくれよ。勉強だってあるんだろうから」
「ええ、わかってるわ、大丈夫よ。ありがとう、フリオニール」
俺の言葉にも素直に応じ、笑みを深めるティナ。
……ああ、マジで可愛い。
『アルバイトさんと俺。』
本人の自覚はないが、誰もが認める超美少女。
そんなティナとの出会いは2年前、彼女の高校入学の時。
入学式への参加など在校生には面倒なだけだが、この時ばかりは男子生徒の目が変わっていた。
(ちょ、あの子超可愛くね?)
(いやーマジで可愛いわ!!)
ざわつく周囲の視線に、釣られるようにそちらを向いて。
他の生徒とは比べようがない程整った顔立ちから、目が離せなかったのは俺も一緒。
その後、彼女がひとりで部室を訪れた時には、度肝を抜かれた。
「あの……」
「は、はい!?」
(あの子だ!)
当時の俺の声が情けなくも上擦っていたのは、今思い出しても顔から火が出そうだが。
「も、もしかして、君、見学希望?」
「……はい。そ、その経験とか、全くないんですが、大丈夫でしょうか?」
おずおずと俺の反応を伺いつつ話しかける姿は、確かに不安げな新入生のもので。
ああ初々しいなあ、なんて俺が逆に落ち着きを取り戻したのは、この時。
「勿論、大歓迎だよ!さ、どうぞ入って入って」
「あ……ありがとうございます」
俺の勧めに応じ、おっかなびっくり部室に入って来た少女に椅子を勧め、コーヒーを淹れる。
「コーヒー飲めるか?あ、砂糖はコレな。ミルクはないんだ、ごめんな」
後で買出しをサボった仲間をとっちめてやらねば、と心の中で思いつつ謝罪した。
すると少女─ティナは、ニッコリと笑って。
「お砂糖があれば大丈夫です、ありがとうございます」
とても可愛らしく、頭をぴょこんと下げた。
(あの時と全然変わってないんだよなあ、可愛いのは……って、イカン、仕事仕事!)
うっかり思い出に浸っていた頭を切り替えて、俺は慌てて朝の作業を開始。
花屋の仕事なんて言うものは、とにかく体力勝負な一面がある。
何といっても相手は生きているものだけに、毎日の世話は必須条件。
「ティナ、水替えは俺がやるから水遣りと掃き掃除、頼むよ」
「はい」
俺は慌てて活けてある花の水替えを済ませ、次に仕入れた花の始末や花活けのための作業を開始する。
そして、開店。
こう言っては何だが、うちの花屋は近くの総合病院の存在もあって、それなりに繁盛している。
今は見舞いに生花持参を禁止している病院も多いが、今の所その心配も無用で。
手頃な値段の花束やアレンジメントが数多く出るので、今から数を揃えておく必要がある。
(昨日の花が残ってたのはレースフラワーだから、それを軸にして……ふむ)
俺は頭の中でイメージを纏めると、さっそく店舗の片隅でアレンジメントの作業を開始する。
元気が出るように、黄色やオレンジの明るい色を多用するのは、俺の癖。
(実際、店先で映えるもんなあ)
たまにピンクを取り入れるけれど、お見舞い用の花には鮮やか過ぎる赤は入れず、仕上げていく。
その分リボンを赤や濃い青にしてやるだけで、印象はずいぶんと変わるものだ。
アレンジメントの花籠も同様に仕上げ始めたところで、ティナから声をかけられた。
「フリオニール。おばさまが休憩したら、って」
「ん、ありがとう。ここが終わったらな」
「……あの、見ててもいい?」
「構わないよ。でも俺のアレンジは、まだ参考に出来る程の腕じゃないぞ」
ティナに笑顔で応じてから、俺は再び作業を開始。
俺の手で仕上げられていく花束を、ティナは目を輝かせて見詰めていた。
「凄いわ」
「え?」
俺の作業に魅入っていたティナから、漏れる呟き。
首を傾げた俺に、彼女はどこかはにかんだような笑顔で。
「フリオニールの手、魔法の手みたい。だって、こんなに素敵な花束を、あっという間に作っていくんだもの」
こちらが気恥ずかしくなってしまう程の、褒め言葉が大層面映い。
「そんな事はないさ。俺なんて本当に、まだまだだからな。花束が綺麗だっていうなら、花のおかげさ」
俺は頬が熱を帯びていることを自覚しつつも、作業を急ぐ。
「お花のおかげ、なの?」
「ああ。だってこんなに頑張って、綺麗に咲いてくれてるんだぞ?」
首を傾げるティナに、俺は手にしていたワイルドローズを示して、笑う。
「綺麗に咲いてくれてるんだから、より綺麗に見えるようにしてあげたくなるじゃないか。な?」
「……うん」
ちょっと曖昧かもしれなかった俺の言葉に、ティナはそれでも頷いてくれて。
「やっぱりフリオニールは、凄いわ」
にっこりと、笑みを深めた。
……ああ、マジで。
ティナが夏休み限定の、短期アルバイトじゃなく。
ずっとウチで働いてくれれば、なんて。
あらぬ妄想を抱いてしまった、自分を。
今日だけは、許してもらおうと思う。
*
それは、10代最後の俺の夏の、記憶。
そして今、愚かしくも甘い妄想が、現実となり。
「フリオニール、ネットでのアレンジメント注文が入ったわ。私がやるけど、配達をお願い」
「了解、30分後なら出られる。ティナ、間に合うか?」
「勿論よ、あなた」
俺の問いかけに大して、悪戯っぽい笑みで答えた彼女に。
「頼りにしてるよ、奥さん」
ニヤリとして俺が応じる、20代半ばの夏。
本編だと、あそこまで露骨に女性を苦手とはしてない印象ですので、今回のパラレルでは多少印象が違って見えるかもしれません。
ま、パラレルですから(苦笑)
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。