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先月勝手に拙宅で開催した「パラレル強化」、続編的な創作です。
まずはFC組から取り組もう、と決意。
現代パラレル設定につき、苦手な方は閲覧をご遠慮願います。
「ティナを、お願いします」
「ああ、任せておくれ、きっと大事に育てるから」
母方の叔父・ブランフォード家にあの子が引き取られて行く日の朝。
最後に抱っこしてみた妹は、私の顔を見て、笑った。
時を経て、私は今31歳。
妹は、今年の秋で21歳。
兄妹生活は、漸く3ヶ月を超えたところ。
『女子大生の妹と、大学講師の兄。』
私と、10歳下の妹ティナとの両親が、交通事故で急逝したのは今から20年前。
当時小学校高学年だった私と赤ん坊の妹、ふたりを同時に育てられる親類はなく、私たちは別々の家で育てられた。
幸い双方共に、子煩悩の優しい家庭に引き取られ、実の親に決して劣らぬ類の愛情を得られたのは救いだ。
特に、あまりにも幼い頃に両親を失い、その記憶すらない妹には。
大学進学を機に、私は養父母と話し合い、今も残る生家で暮らし始めた。
養父母の手で管理されていた生家は、さほど傷みもなかったので、生活を始めるのに何の支障もなく。
亡き両親の痕跡を僅かでも宿す場所での生活を、静かに楽しんでいたといえる。
そんな暮らしを始めてから数年後、今度は妹が高校に進学するタイミングで私に申し出て来た。
「私もここに来たい。兄さんと、お父さんお母さんがいる家に」
真摯な表情で訴える妹に、しかし私は是とは言わなかった。
「お前はまだ、ブランフォード家にいるんだ」
「どうして!?」
「私はまだオーバードクターの身だ、収入もない。お前を養うだけの力は、残念ながら持ち合わせていないのだ」
「兄さん……」
目を潤ませる妹を不憫だと思いつつも、現実の壁は厚い。
最終目標の教授とまでは行かずとも、最低限どこかの大学助手にでもならねば、定職に就いているとはいえない。
こんな状態では、妹を養うどころか2人で路頭に迷う事にもなりかねない。
「ティナ。私を信じて、待っていてくれ」
妹の頭をそうっと撫でて、私は告げる。
「必ず大学助手になってみせる。そうなれば、必ずここでお前と同居が叶うだろう」
「兄さん……」
目に涙を溜めて、それでも必死に笑顔を作ろうとしている妹は、健気だった。
──結局、かなり時間を要してしまったが。
何とか講師となった私と妹との、家族2人での暮らしが始まった。
互いに遠慮する時もあるが、やはり血の繋がった家族との生活にはすぐに馴染むもので。
本日は、妹を伴って亡き両親の墓参りへと向かう最中。
バスの中で白い花束を抱えた私の横で、ティナはとても穏やかな雰囲気に見える。
「ティナ、嬉しそうだな」
「ええ。だって兄さんと一緒にお参りに行けるの、初めてなんですもの」
お父さんとお母さんは喜んでくれるかな、と無邪気に笑う妹は可愛らしく。
私も不思議に顔が綻び、気持ちが穏やかになっていくのを自覚した。
「あ、兄さん、次の停留所」
ふと声を上げる妹に頷いて、私は停車ボタンをさっと押し、妹を先導して下車した。
そしてバス停から程近い場所にある墓地の中、亡き両親の墓の前に立つ。
「お父さん、お母さん、久し振り。今日は兄さんと一緒なの」
妹は笑顔で墓を掃除してから、私から受け取った花を綺麗に活け直して。
とても優しい声で、話しかけていた。
(……父さん、母さん)
穏やかに微笑む妹の隣に立ち、私は心の中で亡き両親へと誓う。
(私たちは元気です。どうぞ心騒がせる事なく、安らかに眠って下さい)
墓前を辞して、再び妹と並んで歩く。
まだ時間は昼前なのに、初夏の太陽は容赦なく照り付ける。
「今日も暑くなりそうね」
空を見上げて目を細める妹の、表情はそれでも嬉しそうに見えて。
兄妹での外出など滅多になかった事だけに、楽しんでくれているのかと思う。
「ティナ、せっかく出てきたのだから、昼食は外で取ろうか」
「え?」
「たまには良いだろう。私と一緒では嫌か?」
首を傾げる妹に、悪戯っぽく微笑んで付け足すと。
「そんな訳ないわ、とても嬉しい。でも、いいの?お給料日前じゃ」
家族ならではの気遣いに、頭が下がると思いつつも苦笑い。
「私をお前の友人と、一緒にしないでもらいたいな。お前が希望するなら、フルコースでも全く問題ない」
「兄さんったら……うふふ」
私の言葉に表情を和らげる妹の笑顔は、見ていてとても嬉しい。
「では、決まりだな。希望はあるのか?」
「うーん、そうね。暑いし、冷製パスタなんてどうかしら」
「ふむ、では知り合いの店が近くにあるから、電話してみるか」
妹の希望を聞いてから、携帯を取り出して番号を探し出す。
コール2回程度で、落ち着いたトーンなれど通りの良い声が届いた。
『はい、リストランテ・ローザ・セルバティカです』
「フリオニールか?私だ」
『ウォーリア、珍しいな。どうしたんだ?』
私の声に、相手はやや驚いた調子で返答してきた。
苦笑いがこみ上げるのを自覚しつつ、用件を述べる。
「忙しい時間に済まないが、2名でランチを頼みたい。何時頃なら大丈夫だ」
『2名なら、すぐ来てくれても問題ないぞ、場所は取って置くから。デートか?』
「妹と食事だ。君にも紹介したいしな、すぐ行く。宜しく頼む」
昼前の多忙な時間帯にも係わらず、友人は頼みを快く引き受けてくれて。
私は相手の『任せてくれ』と言う声に頷きつつ、通話を終了した。
「ティナ、予約が取れたぞ。ここからそう遠くない場所だ、歩いて行こう」
「ええ、兄さん」
私たちは汗ばむ程の陽気の中を、レストランへ向けて踏み出した。
*
少しずつでも、このように。
家族として時を重ねて行ければ、それで良い。
過去ではなく、これからの未来を、家族として過ごすために。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。