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拝借したお題をひとつずつ消化していく方が、毎日更新!と銘打っていられるのですが。
行き当たりばったりの管理人は、そんな合理的な思想を持ち合わせておりません…。
と申しますか、昔から、思いついたら即作成→アップが基本だったのですよね。
以上の理由に拠りまして、昨日拝借したお題文、完成した10本を一気にアップしてしまうつもりです。
無謀極まりないですが、どうぞ皆様ご容赦を。
『守れなかった人が、いたんだ』
それは、普段あれ程勝気そうな少年の、口惜しそうな声。
『敵の罠にかかりそうになった僕を、身を挺して救ってくれたんだよ。とても優しい人だったのに』
きつく握り締めた両手の拳が、震えていた。
無言の俺に、少年は辛そうに笑ってから、続けた。
『もう絶対に、あんな思いはしたくない。だから僕は、絶対に、負けない』
*
(守れなかった人、か……)
永遠に失った、命。
その命はあまりに儚く、あまりに尊くて。
できる事なら、ひと目だけでももう一度、逢いたくて。
(………)
心の中だけで、面影を辿り、名を呟く。
今もきっと、彼女はあの場所に。
永遠に、清らかな水の中で、眠り続けているのだろうか。
「……クラウド」
控え目にかけられた声に、目を開ける。
俺の近くにしゃがみ込んで、俺の姿を不安げに見下ろしているのは。
「ティナ、か」
「あの、そろそろ食事だから、呼びに来たの。ごめんなさい、邪魔してしまって」
憂いを帯びた、紺青がそっと逸らされて。
食べたくなったら来てね、と言い添えて、慌しく立ち去ろうとする。
「───!」
俺に向けられた、華奢な背中の細さは、彼女を思い起こさせて。
「えっ!?」
衝動的な俺の行動は、さぞやティナを当惑させてしまったろう。
しかし今、俺は彼女の細い身体を抱き締めた両腕を、解くことができずにいた。
腕の中のティナが明らかに動揺し、こちらを振り返ろうとしているのが感じ取れたが。
(すまない……今はまだ)
俺を見ないでくれ、と。
振り向かないでくれ、と。
心の中で念じつつ、きつく目を閉じ、腕に力を込めるだけ。
やがてティナの身体から力が抜けて、白く小さな細い手が、俺の腕にそっと置かれる。
「大丈夫よ、クラウド」
まるで歌でも歌うかのように、優しい囁き声がする。
「私もあなたも、ちゃんとここにいるわ」
「………………」
「大丈夫。ね、大丈夫なのよ」
戦士の手とは思えない程繊細な作りの白い手は、ゆっくりと俺に彼女の熱を伝えて。
俺の心に衝動的に起こった荒波が、少しずつ凪いでいく。
仲間の誰より儚げで、しかし誰よりも穏やかな優しさを持った、少女。
その空気に包まれて、俺は漸く腕の中から彼女を解放することができた。
すると、ティナはゆっくり俺の方へ向き直り、俺へ告げる。
「クラウド、行きましょ?」
「───ああ」
ごく自然に頬を緩めた俺を見て、ティナは愛らしい笑みを深めた。
*
あの時、守れなかった人がいる。
でも、それだけではなくて。
今だからこそ、守りたい。
決して、眠らせたりはしない。
(お題配布元:恋花─こいはな─様)
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。