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とりあえず思いつきだけで進めてきた拙宅の連続更新、残すところ今日と明日の2日となりました。
明日の夢想も管理人には難関ですが、それ以上に厄介なのが、本日アップの盗賊さん。
彼をどこに持ってこようか、いつも思案してばかりです。
で、現代パラレルですが…今から謝罪いたします。
これは本当に某有名マンガからヒントを得た、トホホ文章でございます。
管理人の年代から見れば、むしろ当然なのかも…?しかし、お客様には不評の予感。
どうぞ皆様、ご容赦を。
話し変わって、先日アップした兵士×少女のご反応に驚いてます。
申し訳ないですが、レスは後日アップしますので、それまでご容赦を。
今回アップした現代パラレル、アンケートでもとらせていただいて、連作化を検討してみてたのですが…。
どうしようかな…あれ。
本作は現代パラレルにつき、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
硝子越しの青空と、緑。
もう、半年にもなる。
このまま、時だけが流れていくと、思っていた。
『ドロボウさんとわたし。』
孤児院で育てられていた私が、何の予告もなく富豪のお屋敷へ引き取られたのが半年前。
要塞のようなお屋敷の、まだ年若い主人に初めて会った時の事は、今も鮮明に覚えている。
「これは美しい、調査書の添付写真以上だ。将来が楽しみだな」
尊大な態度で私を眺め、綺麗に手入れされた長い爪の手で頬を撫でられたとき、ぞくりと起こったのは不快感。
「案ずるな、お前にはちゃんとした教育を施す。私の女として恥じる事がないだけの教養は、身に着けさせよう」
濃い紫色の唇が弧を描き、耳にすれば寒気が走るような声で述べると。
「セフィロス、全てはお前に託す」
「お任せ下さい、マティウス様」
彼の後ろに控えていた長髪の男性に、それだけを言い残し、私に一瞥もくれずに立ち去った。
言い知れない恐怖に竦んだ私の身体を解したのは、私と共に残っていた男性の声。
「……主の意思には逆らえない。お前はこの館に捕らわれた小鳥と同じだ、諦めてもらう」
「あきらめる?」
言葉の意味を問いかけると、彼は寂しげに笑って。
「もうお前は、ここから出ることが叶わない」
ぽつりと告げられた言葉が、苦しくて、私はただ俯くだけだった。
以来ずっと、私は館の離れから出ることも叶わないまま、硝子越しの世界を眺める事しかできない身の上。
勉強も全て自分付となったセフィロスから教えられるだけで、侍女の出入りすらなく、言葉を交わすのも彼だけ。
(ずっと、このまま……)
閉ざされた檻の中、絶望を生きる私。
幾日の時が流れても、変わらぬ空間に閉じ込められたまま、一生を終えるのだと思っていた。
*
館内の変化に気付いたのは、今朝。
(……どうしたのかしら。何だか今日は、とても慌しい)
離れにまで喧騒が感じられる事など皆無だったというのに、今日は館全体が浮き足立っていて。
首を傾げていた所に、ノックの音と、強張った表情のセフィロス。
「セフィロス。何かあったの?」
彼は私に近付くと、ゆっくりと跪いて、説明を始めた。
「ティナ、よく聞け。今朝この館に『怪盗タンタラス』の予告状が届いた」
「……まあ」
巷を騒がせているという、神出鬼没の怪盗・タンタラス。
並み居る富豪が揃いも揃って財産を盗まれているという噂を、私も新聞やニュース報道で知ってはいたけれど。
富豪の財産を狙うというなら、確かにこの家も標的に?と。
ぼんやりと考えていた私の頬に、セフィロスの大きな手が触れる。
「セフィロス?」
「いいか、ティナ。奴は『この館で一番美しいものを戴く』と予告してきた」
「……美しいもの」
彼の言葉を繰り返した私に、彼は頷く。
「主のコレクションである美術品は数多い。私は警護にあたることとなった。夕食後は、ひとりで大丈夫だな」
「──うん。セフィロス、お仕事頑張ってね」
口調は事務的だけど、彼はずっと私を気遣い、時には就寝時まで話し相手になってくれる事もあって。
でも今宵は、大切なお役目を任されたという事なのだろう。
私は素直に頷き、読書でもして過ごそうと心に決め、彼へ声をかける。
彼は一瞬だけ目を見開き、微かにだけれど微笑んでくれた。
夜も更け、母屋の雰囲気はどこか異様なのが、こちらにも伝わってくるようだ。
読書にも飽きて、窓から眺めた硝子越しの世界には、満天に星が瞬いていて。
(今頃、みんな元気かな……)
きっとこの星空であれば、孤児院の皆は外でにわか天体観測会をしてるだろう、なんて思いを馳せる。
院で一番物知りの子が星座ひとつひとつを丁寧に解説するのを、皆が真剣に聞き入ってるのだろうか、なんて。
外の世界を思い出してしまう度、未だにこの境遇を諦められない自分が弱い、と叱咤する。
(駄目、駄目!せっかくここへ私が来る代わりに、院には多額の寄付金が入ったんだから)
頭を振って、後ろ向きな思考を追い出そうとするも、追憶はエスカレートしていくばかりで。
(……っ、だめ、泣いちゃダメ……)
頬を伝うひと雫を慌てて拭うと、不意に高い声が届く。
「ああ、駄目駄目!レディーがそんなに乱暴に顔を擦って、傷になっちまったら大変だぜ?」
(──!?)
初めて耳にする声に、私は慌てて周囲を見回すと、暗闇の中から誰かの歩み寄る気配。
天窓から零れる月光に照らされた、勝気そうな笑みの綺麗な少年が、こちらをじいっと見つめていた。
「あなたは……誰?」
恐る恐る声をかけると、目の前の人は、ますます笑みを深くして。
「初めまして、レディー。俺はジタン=トライバル。またの名を『タンタラス』と言えば、いいかな」
彼─ジタンは大袈裟なお辞儀と共に告げると、器用にウィンクをして見せた。
「『タンタラス』!?」
「そう、よろしくお見知り置きを。にしても、この家の人間って皆阿呆だよな。俺、ちゃんと書いたのに」
不敵な表情で彼は答え、身を急に翻し、私の右手を恭しく取り、掌へ唇を落とした。
「俺は『この館で一番美しいもの』を戴くって、ちゃんと予告したってのになあ」
「え……?」
首を傾げる私を見上げ、満足げに頷くと、あまりに突飛な発言。
「さて、ティナ=ブランフォードさん。君をいただきに参上しましたよ」
「……!?」
混乱する私の手をぎゅうっと握ってから、私の目を覗き込むように、彼が言葉を紡ぐ。
「俺はレディーの味方なの。君のような可愛い子が、こんな場所に閉じ込められてるなんて、我慢ならない」
「で、でも、私」
「大丈夫だって!この俺に、できない事なんてないからさ」
大変魅力的な笑みと共にそう告げると、彼は私の手を一度離してから、再度手を差し出して。
「さ、レディー。一緒に外へ参りましょう。お手をどうぞ?」
「……」
突然のお話に躊躇したけれど、でも本当は、私。
一瞬だけセフィロスの顔が浮かんだけれど、それでも、私、やっぱり。
「……いい、の?私、外へ出て、いいのかな」
戸惑いながらの私の言葉に、ジタンはしっかりと大きく頷く。
「勿論さ!俺と一緒に行こう、な?」
「──うん!」
思いきってジタンの手に自分のそれを重ね合わせ、しっかり握った。
*
(……さよなら)
追っ手を振り切り、館から遠く離れた高台で、眼下に見下ろすのは懐かしい孤児院。
みんな元気で、と心の中で叫ぶ。
それから私の隣へ立っている人へ、笑いかけた。
「ありがとう、ジタン。もういいわ」
「そう?んじゃ行こうか、レディ」
「ええ」
当然であるかのように私の手を取ってくれたジタンに、私は笑顔で頷いた。
私はもう、懐かしい場所には戻れない。
あの孤児院へ戻ったら、皆に迷惑をかけてしまうから。
だから、昨夜彼らのアジトで迎えた夜に。
ジタンに『私を遠くの国へ連れて行ってもらえないか』と頼んでみたら、あまりにも意外な答え。
「何言ってんの、レディー。君は俺が盗んだ『宝物』なんだからね、手放す訳ないだろ?」
「え?」
「もちろんこの国に置いてなんて、行かないさ。俺とずっと一緒だよ」
彼はさらりと言ってのけ、私の手を取ると、恭しく掌に口付けをして見せる。
そう、初めてあったあの時と同じように。
「ジタン」
「掌へのキスっていうのは、懇願の印。愚かな男の『麗しいレディーを得たい』っていう、ね」
自嘲気味に笑みを浮かべてから、彼は私へ、とても優しい口調であの時と同じ言葉を繰り返す。
「『ティナ=ブランフォードさん。君をいただきに参上しましたよ』。どう、俺に一生盗まれてくれる?」
「……ジタン……!」
私は言葉を出す事ができず、精一杯の笑顔を浮かべ、彼に抱きついて。
「うわ、ティ、ティナ!?」
彼が私を支えきれずに床にひっくり返ってしまったのは、言うまでもない。
ありがとう。
私を硝子の檻から盗んでくれて、ありがとう。
世界一の、私の、ドロボウさん。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。