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とは申しましても、結局現代パラレルですから別モノなのですが。
ちなみに、冒険家がかなり優遇されるオチなのは、トホホ管理人の思い入れが元ですので、どうぞご容赦を。
本作は現代パラレル設定につき、苦手な方は閲覧をご遠慮願います。
温かくて、大きな手だった。
『先輩とわたし。』
大学の入学式後、新入生歓迎式典の中で始まったのは、学内サークルに新入生の勧誘を行うアピールタイム。
学部も学生数も多いというこの大学の、変わったサークルは数あれど、その中でもひと際異端を放っていたのが。
真っ暗なステージから重厚なテーマソングと共に登場した、古代の遺跡にありそうなお面をした男性2名。
静まり返った空気の中、マイクを握った2人が、最初の発声。
「どーもぉー、考古学研究部でぇーす!」
「新入生の皆さぁーん!ご入学、おめっとーございまーすっ!」
……登場時の印象と、がちがちの固い名前と、軽い調子のお喋りのギャップ効果は高くて。
爆笑の渦に包まれた新入生たちを眺め(たのだろう)、右側のお面の人が中心になって活動紹介。
夏には遺跡発掘にも出かけたり、なかなかアクティブな活動をしているとの事。
(あの先輩たち、やっぱり考古学部なのかな)
父親がかつて在籍し、今も当時の思い出を懐かしく語ってくれている、この大学の考古学部。
将来同じ道への進学を希望している自分としては、とても興味をそそられて。
(とっても、楽しそう)
テニス部の見学をするという友人と別れ、私はひとり部室を目差した。
「えーと、ここ、かな」
薄暗い年代ものの学部校舎の奥、古めかしい印象の重厚な扉には、確かに『考古学研究部』の手書きポスター。
中からは、時折誰かの笑い声も聞こえてきて、とりあえず誰かがいるらしかった。
思いきって扉をノックすること数回、すぐに「はぁーい」とのんびりした返答があって。
扉を開けてくれたのは、恐らく上級生のデニムウェアの男性。
さらさらしてそうなブルネットの髪に、バンダナが印象的。
「あの、ウチに何か用?」
私を見るなり首を傾げるその人の声に、聞き覚えがある。
(あ、この声)
さっき部の活動紹介をしてた人のひとりだ、と思いつつ、私は思いきって口を開いた。
「あの、見学希望なんですが」
戸惑った様子の男性に用件を告げると、その人は改めて私を眺め、口を開く。
「………………マジ、で?」
「は、はい」
「マジで!?マジでマジでマジ!!よっしゃー!」
念押しをしてきた彼に頷くと、途端に彼は盛大に雄叫びを上げ、ガッツポーズ。
(えぇ!?)
その反応に、私の方が戸惑いを感じた。
「おいロック!何騒いでんだ?」
彼の反応を見咎めたのか、奥から届いた叫び声は、部活紹介をしていたもうひとりの男性のもので。
その声に向かって、私の目の前にいる人が怒鳴り返した。
「これが騒がずにいられるか!バッツ、見学希望者だぞ!しかも超美人の女子!」
(は!?)
「え、ホントかよ!?」
2人の盛り上がりにますます困惑する私を他所に、もうひとりやって来たのはラフなシャツ姿の人で。
茶の髪を無造作に流してる、人懐こそうな印象の人だったけれど、彼も私を一瞥して満面の笑み。
「うおぉ、マジだ!すっごく可愛いじゃんか!」
「だろ!やったなバッツ、俺らもこれでとうとう薔薇色のキャンパスライフだ!」
「本当だなー、ロック!」
「あ、あの……?」
私を完全に置いていく形で、男性二人は大騒ぎ。
そこへ、唐突に背後から、低い声。
「……ロック、バッツ。あんたら、新入生を怖がらせてどうする」
「お、クラウド!遅かったな、何してたんだ?」
振り返ると、癖のある金髪に薄いブルーの瞳を持った、もの静かな印象の男性がいて。
「教授に呼ばれた。……あんた、見学希望者か」
「え、は、はい」
「済まなかったな、こいつらが馬鹿騒ぎをして。入るといい」
私に静かに言葉をかけてくれると、入室を促してくれた。
古い印象は否めないけれど、存外整頓されていた部屋の中、コーヒーの香りが漂う。
私にカップを持って来てくれたのは、ロック=コールという名前の、院生さんだと教えてくれた。
「いやー悪かったね、大騒ぎしちまって。コーヒー、大丈夫かい?」
「はい、ありがとうございます」
「俺もごめんね、嬉しくなって、はしゃいじゃってさ」
次にお話してくれたのが、3年生のバッツ=クラウザーさん。
「あんたらが暴走したら手に負えなくなるんだ、少しは自重しろ」
そして助け舟を出してくれたのが、4年生のクラウド=ストライフさん。
私の予測どおり、この部は考古学部在籍者たちの集まりで、現在の部員は皆男性だという。
ロックさんを中心にバッツさんと、たまにクラウドさんのフォローも入りつつ、活動の詳細な説明を受けて。
私はますますこのサークルに興味を抱き、楽しみになってきていた。
「正直、ティナみたいな女の子が興味示してくれるのは、予想外だったな」
「ホントにな。でも、将来ウチの学部希望してくれてるんなら、是非入ってもらいたいよ」
ロックさんとバッツさんは、にこにこと人好きのする笑顔で話してくれる。
でもクラウドさんは、ひとり渋い表情で。
「しかし、遺跡発掘はなかなか大変な作業だぞ。体力的にも結構キツイが、それでも大丈夫か?」
「だああっクラウドぉ、お前ってホントKY!せっかくの若人のやる気を削ぐなよ」
「俺は事実を述べたまでだ」
バッツさんの指摘にも涼しい顔で答える様子に、私は自然に笑みが零れた。
「皆さんありがとうございます、私を気遣って下さって。あの、是非入部させて下さい」
笑顔のままでそう告げると、彼ら3人は顔を見合わせ、それから私の方へ向き直り。
「ティナ、マジでいいの?」
「俺らは大歓迎だけどさ、本当に平気?」
「こっちに気を遣う必要はないぞ」
3人は、言葉は全然違うけど、やっぱり優しくて。
「──はい、よろしくお願いします」
私は自然に笑顔になって、頭を下げた。
すると、彼らの中で真っ先に動いたのは、ロックさん。
男の人特有の大きなごつい手が、私の目の前に差し出されて。
「?」
「こっちこそ、よろしくな、ティナ」
戸惑う私の手をさっと取ると、固く握って握手の動作。
そして、今日見た中で一番の笑顔を見せてくれた。
*
(……あの手が、始まりだったのね)
ぼんやりと覚醒する意識の中、思い出していたのは、昔の記憶。
大学生になったばかりの私が、初めてロックに会ったとき。
もう、あれから6年が過ぎて。
今の私は、彼の腕の中で朝を迎える毎日。
「ん……」
視線を移すと、去年『私の旦那様』になったロックが、まだ眠りの中にいて。
それでも、私を抱き締めてくれる温かい手は、変わらないから。
(ありがとう、ロック)
私はそうっと身を乗り出して、眠っている彼の頬にキスを贈ると。
もう少し眠っていようと、彼に寄り添って目を閉じた。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。