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本命カップリング以外の創作を増やそうとしていたら、唐突に降りたネタ。
それが何故現代パラレル的になってしまったのかは不明です。永遠の謎です。
しかも8×6ベースだったのに、4が出張ってます。更に謎です…。
おまけに、拙宅の創作の中では異様に長いものになりましたよ(涙)。アイタタタ。
ま、どうせ続きは書かないので、いいんですけどね(苦笑)
あの場所が。
あなたと、私の、指定席。
『待ち合わせはこの場所で』
最初にその場所を見つけたのは、偶然。
大学の3限目、講義が臨時休講になって。
お昼は既に済ませた後で、だけどそのまま大学にいる必要もなくて。
バイトもお休みの日だったから、本屋さんでも行こうかな、って。
気になっていた新刊の文庫本を運よく見つけ、ゲットしてから。
普段通らない道を、試しに歩いてみた時。
(……わあ……)
古びた洋館のガーデンスペースに設えられた、オープンカフェ。
アンティークを意識した造りではなく、自然に年月を重ね風合いを増した、壁ひとつ取っても風情があって。
昼食後のちょうど暇な時間なのか、お客様はいなかったけれど。
誘われるように門を潜って、中へ足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
柔らかく響くテノールの主は、黒いギャルソンエプロンを纏った銀髪の男性。
体格で男性だと判別できるけれど、正直普通の女性より余程綺麗な人だと思う。
「初めてですよね、お客様」
「え、あ、はい。あの、今、大丈夫ですか?」
急に声をかけられた事に動揺しつつ、慌てて訊ねてみると、男性はにっこりと笑みを深めて。
「勿論ですよ。さあ、お好きな場所へどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
彼に誘われるまま、私は目に付いたテーブルへと進んだ。
淡い色の薔薇が傍らに咲く2人掛けの小さな席は、安らぎを与えてくれた。
「ご注文はどうします?」
先程の男性が、笑顔でトレイにメニューとお絞り、お水を乗せてきてくれて。
「ローズティー、お願いできますか?」
「かしこまりました」
魅入ってしまいそうな笑顔で応じてくれたのが、嬉しいと思った。
(不思議ね。初めてなのに、とても落ち着くわ)
改めて庭をぐるりと眺めると、よく手入れが行き届いた英国風のガーデン。
少し齧った程度の知識だけれど、見れば花だけでなくハーブ類まで植えられていて。
手入れが大変なのではないか、とのんびりと考えていた。
その時私の思考を打ち破ったのは、先程とは違う落ち着いたトーンのバス。
「お待たせしました」
抑揚は控え目だけれど、でも無機質な印象は与えない声の方を見て。
「……あ」
「──あ」
私と相手は、硬直した。
(スコール=レオンハートさん、だったかしら)
同じ学部に在籍はしているけれど、今まで話をした事などない同級生。
整った顔立ちが、私の友人含めて女子達から大人気だとは知っているけれど。
こうして彼自身の声を耳にしたのは初めてで、こんな優しい声をしているだなんて、知らなかった。
「……スコール。お知り合い?」
うっかり固まった私たちの空気を破ったのは、先程のテノールの男性で。
首を傾げる彼に向かって、スコールが頷いて説明する。
「大学の同級だ」
「ああ!成程ね」
彼はうんうん、と頷くと、私に向かって笑顔を見せて。
「僕はセシル=ハーヴィー。スコールの従兄で、一応ここのオーナーです。よろしくね」
優しい笑みを絶やさぬままに、自己紹介してくれた。
「ティナ=ブランフォードです。スコールさんと、同じ学部に在籍しています」
「そう、可愛らしい名前だね。ティナ、って呼んでも大丈夫かな?」
「え、そ、そんな事は。ありがとうございます」
思いがけない褒め言葉を貰って、内心うろたえつつもお礼を言った。
すると彼は、またスコールへと向き直り。
「スコール、今は空いてるし、このまま彼女のお相手を務めて差し上げて」
頼んだよ、と足取りも軽やかに去って行き、後に残されたのは、スコールと私とローズティー。
「……すまなかった」
「え?」
ふんわり漂う薔薇の香りの中、彼は複雑そうに微笑む。
「客に対して、失礼を働いてしまったな」
「いいえ、私こそ不用意に声を上げてしまって」
微かにだけれど、いたたまれない表情を見せる彼が、気の毒で。
言い募ると、彼は目を見張ってから、穏やかな微笑を見せてくれた。
「あの、スコール、良かったらそっち、座って?その方が、お話しやすいと思うの」
彼の笑顔に頷いてから、私は向かいの椅子を勧め。
「?ああ」
素直に彼が選んでくれた事に、安堵した。
「美味しいわ」
「口に合うなら何よりだ」
淹れてもらったローズティーの芳醇な甘い香りは、心安らぐ。
でも、一度も話をした事がなかった人を向かいに午後のお茶なんて、不思議だと思っていると。
「ティナ」
不意に向かいのスコールから、声をかけられる。
「あんた、普段は確かセリス=シェールと行動していただろう。今日はひとりか」
「ええ。今日はセリス、午後の講義がフルで入ってるの。私は3限目までで、でも休講になったから」
「成程な」
納得した様子の彼は、こちらに探るような視線を向けて。
「何故ここに来た?この店はセシルが趣味でやっているようなもので、大っぴらに宣伝もしていない」
淡々とした調子で説明してくれるのに、頷きつつ。
「そうだったのね。でも、私も偶然通りがかって、たまたま見つけたのよ」
「……そうか」
「あの、私も質問して、いいかしら」
私は先程から聞きたいと思っていた事について、訊ねてみた。
「スコールは、どうしてここで働いていたの?」
すると彼は一瞬躊躇した様子だったけれど、教えてくれた。
「大学進学を機に、ここに下宿してる」
「そうだったの。素敵なお家ね。それに、優しそうな方。羨ましいな」
彼が下宿しているというこの家と、彼の従兄に対しての感想を述べた。
「羨ましい?」
彼が聞き返すのが不思議だと感じつつ、頷いて。
「ええ。あんな素敵なご家族……ご親戚がいるのがいいな、って」
「あんたの家族は?」
スコールから当然のように返された質問に、苦笑い。
「いないの。私、小さい時に両親とも亡くしていて。だから」
「!……すまん」
「なぜ謝るの?あなたが知らなかったのは、当然よ。だってあなたと私、今日初めてお話したのだから」
彼の済まなさそうな表情に首を傾げると、彼は目を瞬かせて。
「そうだった、な」
「でしょう?」
今更のように頷くのが何だか面白くて、私は思わず笑みを浮かべた。
すると、スコールがふっと視線をこちらへ向けて。
「ティナ」
「え?」
「その、あんたが良ければの話、なんだが」
彼はひと呼吸置いてから、続ける。
「またこの店に、来てもらえるか。セシルもあんたを気に入ったようだし、俺も歓迎する」
「でも、いいのかしら?」
「ああ」
「──勿論僕も大歓迎だよ、ティナ」
「「!」」
唐突にセシルの声がして、2人揃って息を呑む。
彼は穏やかな笑みを湛えたまま、トレイを片手に立っていた。
トレイの上には、綺麗に盛り付けられたスコーンが美味しそうな湯気を上げていて。
「良かったらどうぞ、今度出そうと思ってる商品の試作品で悪いけどね」
「え、でも」
「遠慮なんかいらないよ。君はスコールのお客様だもの、ね?」
柔和な笑みで告げるセシルに、何というか反論は許されない雰囲気があって。
スコールもややぎこちなく、でもしっかり頷いた。
「あの、それじゃ遠慮なく、いただきます」
「うん、良かったら感想も聞かせてね。あ、それと」
セシルは笑みを深めて、言葉を続ける。
「お友達と一緒でもいいけれど、たまにはひとりで来てあげて?その方がスコールも話しやすいだろうし」
「っ、セシル!」
「?」
セシルの言葉の意味と、スコールが声を詰まらせた理由は、わからなかったけれど。
そして、今日も私はここへ来る。
「こんにちは」
「いらっしゃい、ティナ。いつもの席、空いてるよ」
「ありがとう、セシル」
季節は流れ、薔薇の実も摘まれた後、秋の花がガーデンを彩って。
「そろそろオープンカフェもお終いの時期だね。明日は臨時休業にして、テーブルの片付けだな」
高くなった空を見上げて、セシルが呟くのが耳に入る。
「あの、お手伝いしましょうか?私、明日はバイトもないから、午後は空いてるの」
私が声をかけると、彼は目を輝かせて。
「本当?助かるよ!バイト代はあまり出せないけれど、いい?」
「そ、そんな!お金なんていただけないです!」
驚くような提案に、慌てて否定をしていると。
「貴重な時間を割くんだ、貰えるものは貰っておけ、ティナ」
耳に心地良く届く、バスの音色に視線を向ければ、微笑を湛えたスコールがいて。
「スコール!午後は講義が詰まっているんじゃなかったの?」
「3限目が休講になったから、中抜けだ。また戻る。セシル、俺も明日の午後は空いてる」
彼の言葉に、セシルは笑顔で頷いた。
「それじゃ明日は3人で作業だね。ティナ、良かったら夕食も食べて行って。帰りはスコールに送らせるから」
「え、でも」
「そうするといい。俺の方は問題ない」
いつも優しい2人に、私はつい甘えてしまう。
「あの、じゃ……お願いします」
「任せろ。セシル、後は俺がやるから」
「はいはい。じゃ、頼んだよ」
スコールにポットを渡して、セシルがお店の奥へ引っ込むのを見届けていると。
「ティナ」
不意にスコールが私を呼んだから、視線を彼へ向ける。
「なあに?」
「あんた、確か土曜日はバイトだったな。日曜日はどうなんだ」
「え?いいえ、日曜日はお休みよ」
「そうか」
真剣な表情で頷くと、スコールはどこか切羽詰ったような表情で。
「その、あんたさえ良ければ、なんだが……遠出しないか」
「……え?」
「いや、無理にとは言わない。あんたの予定もあるだろうから」
寡黙な彼には珍しく、一気にまくし立ててから視線を逸らす。
よく見ると、頬が赤らんでいるのが見て取れて。
私は首を捻って、事実整理。
(遠出……の、お誘い。って……え、これって、もしかして)
それは所謂『デートのお誘い』という事ぐらいは、友人達から鈍いと嘆かれる自分にも判断できる。
(スコールが、私を?どうしてかしら。でも、これは夢じゃないし)
目の前でこちらを気にかけている彼の姿は、どう見ても演技には見えない。
何よりここで話をするようになってから、この人に対する印象が、がらりと変わった。
寡黙で冷静沈着だと称されていたのは、照れ屋で人見知りの傾向がある自分の性質を隠すための無意識の仕草。
打ち解ければ、驚く程によく話し、笑う人だと知ったから。
その彼が、私に声をかけてくれたのだから。
(……何だか不思議。心が、温かい)
自然に零れる、笑み。
「スコール、どこに行こうと考えていたの?」
「?」
怪訝そうな表情になった彼に、私は笑顔で言葉を続ける。
「紅葉狩りなんて素敵かもしれないわ。どうかしら」
「……予定、空けてくれるのか」
「大丈夫、元々予定はないの。それに、あなたとお出かけできるの楽しみ」
「……そう、か」
呟くスコールの表情が、思いがけず柔らかなものになったから。
私も釣られるように、笑みを深めた。
日曜日が、待ち遠しい。
*
(……中学生の男女交際みたい、だよねえ)
僕は心中でそうっとぼやきつつ、初心な2人を見守る。
見た目は超美形で『泣かした女は数知れず』っぽいけれど、実は物凄く純情で奥手な従弟。
そんな彼が、大学の入学式で一目惚れしたという、外も中も物凄く綺麗な彼女。
春にここで初めて会話を交わしてから半年、やっとこデートに漕ぎ付けたという超スローペースには苦笑しつつも。
従兄の自分としては、彼に幸あれと願わずにはいられない。
それから、彼の外見に囚われず、本質を見抜いてくれる少女にも。
(日曜日は晴れるといいねえ、記念すべき初デートだもんね)
笑顔で会話を続けているふたりの幸せを祈りつつ、僕はお茶の用意を始めた。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。