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傍目から見れば立派なバカップル……に見えなくもないかな?と淡い期待。
されどご本人たちには自覚はありません。
そんなずれた2人です(オイ)
青空と、緑の大地。
穏やかな日差しの中で、目を開ける。
「あら、もう目を覚ましたのね」
「久し振りの外だ、気持ちがいいのだろう」
私の顔を覗き込んで、笑うふたり。
女性が私の髪の乱れを整えて、男性は私を抱き上げる。
逞しい腕は、どこか人のそれとは違うけれど。
私は確かに知っている、世界の誰より安心できる温もり。
「ふふ、あなたを見つめているわ」
「大分目も見えるようになってきたのだな。マデリーヌに似て、とても綺麗な瞳の色だ」
女性の優しい声も、男性の穏やかな声も、私は大好きで。
ふたりにそれを伝えようと、声を出す。
「うー、ううー」
「まあ!今日はたくさんお喋りするのね、ティナ」
「綺麗な声をしているな、将来が楽しみだ」
ふたりは共に私を撫でて、笑っていた。
そう、あれは、おとうさんとおかあさん。
*
目を開けると、大分見慣れた白い天井。
でも今は、カーテン越しの微弱な光で、仄暗い影を纏う。
「……ゆめ……」
緩慢な動作で上半身を寝台から起こし、目を擦る。
部屋の暗さから言っても、恐らく今は真夜中で、どう考えても他の仲間も熟睡中だ。
なのに、先程見ていた夢のせいか、やたらと意識が鮮明になっていて。
再び寝具に潜ったとしても、すぐに寝付く事は困難であろうと推測できた。
軽く溜息を吐いてから、思い切って寝具から這い出し、手近な上着を羽織る。
静謐な夜の空気の中、なるべく音を立てないように、バルコニーへと滑り出て。
藍色の夜空と、満天の星に、しばし心を奪われる。
(綺麗だわ、とても)
ほんの少しだけ湧き上がる、悪戯心。
浮遊の呪文を唱え、音も立てずに浮き上がる。
せめてあともう少しだけ、星に近付いてみたくて。
「ティナか?」
全く予想だにしなかった、ひとの声。
ゆっくりと身体の向きを変え、ふわふわと声の方向へ進む。
「まあ、クラウド。どうしたの?」
「それは俺の台詞だ。こんな夜中に何をしている?」
自分と同じように、室内着に上着を羽織った状態のクラウドが、こちらを見て呆れ顔。
彼も自分の部屋のバルコニーから、外を眺めていたようだった。
「散歩なの、目が冴えてしまって。あなたは?」
「まあ、俺もあんたと大して変わりはない。星を眺めていただけだからな」
私の答えに納得してくれたのか、彼は頷いてから、再び口を開く。
「ティナ。良かったら、ここに座らないか」
彼が示してくれたのは、バルコニーに置かれている小さな椅子。
私は頷いて、腰を下ろした。
夜の外気に晒された冷たさの中に、木の温もりは感じられない。
すると。
「冷たかったか、すまない」
「え、きゃ!?」
クラウドの声がして、気配が近付いたと思った途端に腕が伸び。
気付けば横抱きの体制になって、そのまま彼が椅子に腰を下ろす。
満天の星空の下、クラウドに寄り添って、彼の体温に包まれて。
(温かいわ。……でも)
私が腰掛けるのは、彼の脚の上。
確かに、衣服越しでも先程よりとても温かいのは、間違いない事だけれど。
今の自分の状況は、明らかに彼の負担になっている。
何しろ体重を完全に彼へ預け、支えてもらっているのだから。
「あの、クラウド」
「何だ?」
「あなた、重いでしょ?だから、降ろして」
今だにその両腕に絡め取られているために、ぐっと距離が近くなった、クラウドの端整な顔は。
形良い唇を上げて、微かに笑みを漏らした。
「問題ない。むしろあんたは軽過ぎて、驚いた」
「そう、なの?」
「ああ。こんな機会が今までなかったから、想像もしていなかったが」
クラウドはそう語ると、片手を私の右腕へ伸ばし、軽く握る。
彼の大きな手は、私の細い腕など容易に掴めてしまうようだった。
その腕を眺めて首を傾げ、彼は言葉を続けた。
「本当に、あんたは華奢だな。こんな細腕で、よくも剣を振るっていたものだ」
「よく、わからないわ。確かに私の腕力は他の仲間より低かったから、魔法も併用して戦っていたけれど、剣技の教育も受けていたはずだから」
「……そうか」
私は曖昧な記憶を引きずり出しながら、答える。
すると彼は微妙な表情になってから、頷いて、私の腕を解放した。
静かな夜、星は音もなく瞬いていて。
私もクラウドも互いに無言で、空を眺める。
不必要な会話などなくとも問題ない、心地良い沈黙が続いていたが。
「きゃ!」
不意に一陣の冷たい風が吹きつけ、私は短く叫んで目を閉じた。
同時に、クラウドが私を包む腕の力を強くして、私の頭は彼の胸へ押し付けられる。
彼の心臓の、力強い鼓動が直接届く。
(……あたたかい)
先程見た夢の、おとうさんの腕の力と温もりを、思い出して。
でも、あの時とは違う、彼の温もり。
決して筋肉質ではないけれど、大剣を振りかざして戦うに相応しいだけの逞しい体躯が、私を包み込んでいて。
それを意識した途端、不意に心臓が大きな音を立てた。
(何?この、感覚)
初めて経験する、高揚感にも似た、不快ではない胸のざわめき。
自分で理解できない自分の変調に動揺して、私は無意識に身を硬くする。
「……驚かせたか?済まなかった」
耳元で、クラウドの声が優しく届き、腕の力が緩まって。
私はゆっくりと彼から身を離し、その顔を見上げる。
彼は一件無表情で、でもその瞳は確かに私を案じるかのような色を宿して、こちらをじいっと見つめていた。
「何でもないわ。大丈夫よ、ごめんなさい」
「そうか?なら、そろそろ戻った方がいいな、夜も遅い」
クラウドはそう言うなり、私を横抱きしたままで立ち上がる。
「部屋は施錠しているのか」
「あ、ええ」
「ならば、窓から戻るしかないようだな。行けるのか?」
「大丈夫よ、心配しないで」
私は笑顔で答え、呪文を唱えて再び空へ浮かんだ。
位置を調節し、クラウドとほぼ同じ背の高さになる。
「じゃ、クラウド、おやすみなさい」
私は彼へ挨拶を述べて、そのまま身体の向きを変え──ようとすると。
「ティナ」
背中にクラウドの声が届き、再度振り返った。
「なあに?」
返答した私を見るクラウドの表情は、真剣そのもので。
一瞬逡巡するかのように彷徨った視線が、ぴたりと私に向けられる。
「今度、真夜中に目が覚めるような事があれば、ちゃんと廊下から尋ねて来い」
「え?」
「星見なら、いくらでも付き合ってやる。絶対にひとりで出歩くな」
「……はい」
きっと私の身を案じて言ってくれたのだろう、彼の気遣いが嬉しくて。
私は笑顔で頷いてから、彼との距離を心持ち詰めた。
「ありがとう、クラウド。じゃ、今度こそ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
少しだけ微笑んでくれた彼に、不意に思い出した、前の世界の仲間が教えてくれた感謝の印を贈る。
『こうすれば、どんな相手だって喜ばないはずないって、絶対!』と断言していた、活発な少女を思い出して。
頬に、軽く唇を当てる。
「!」
クラウドが身を強張らせたようだったけれど、きっと間違ってはいないだろう。
私はふわりと身を翻し、自分の部屋へ戻った。
(あたたかいわ、とても)
逞しくて力強い、クラウドの腕の温もりが、今も身に宿っていて。
夢の中のおとうさんの抱擁を思い出して、おかあさんの笑顔を思い出して。
今度こそ、安眠できるだろうと確信して、自然と顔が綻んだ。
*
高鳴った胸の鼓動の正体を探るのは、この次でいい。
だって、今はとてもよく、眠れそうだから。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。