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3 見えていたのに届かない
伸ばした手が、届かなかった、と。
彼は、ぽろぽろ涙した。
*
目を開けた、私の視界を一杯に埋めたのは。
必死の形相で私を見つめるルーネスと、眉間に皺を寄せたクラウドだった。
「……わ、たし……?」
「ティナ!良かった、怪我はっ!?」
「落ち着け、ルーネス」
私をすぐにでも起こそうとする彼の腕を、クラウドが静かに止める。
「何でだよっ」
「崖から転落したんだ、どこか怪我をしているかもしれない。すぐには動かすな」
いつも通りの口調ながら、厳しい調子でルーネスを嗜めると、私の体をざっと検分してから訊ねてきた。
「どうだ、自覚症状はないか」
「そう、ね……大丈夫そうだわ。途中でどこかに衝突してはいなかったから」
私は答え、先程自分が真っ逆さまに落下した、5m程の崖を見上げた。
イミテーションに足元を攻撃され、受け身を取る余裕もなく宙を舞った自分。
地上激突すれすれの地点で、どうにかレビテトを発動させられたため、衝突による怪我は防げたのだけれど。
敵の攻撃により負った、思ったよりも派手な裂傷は、隠す余裕もなかった。
勿論それは、目敏い彼らの知るところとなって。
「ティナ、やっぱり怪我してる!今治癒させるからね、じっとしてて」
ルーネスが魔力を集中させたが早いか、ケアル系特有の緑色の光が彼の掌に生まれ、私へ注がれ始めた。
緑色を帯びた癒しの光に、怪我の痛みが溶け出していくようで。
「ありがとう、ルーネス」
私がお礼を述べると、目の前の彼は一瞬だけ目を丸くして、それから。
綺麗な大きい瞳から、ぽろぽろ涙を零した。
「ルーネス?」
「どうした」
私やクラウドの問いかけに彼は答えず、ぎゅっと拳で涙を拭う。
「ごめん……ちょっと、安心しちゃって」
普段の大人びた言動は全くなく、そこにいるのは、不安げに肩を震わせる少年で。
「さっきティナが落ちて行ったとき、僕、一所懸命手を伸ばしたんだ」
「ルーネス」
「馬鹿みたいだよね、届くはずなんてなかったのに。だけど思わずそうして、でもやっぱり届かなくて……」
治癒の光が、彼の集中が途切れたために消えてしまったのだけれど、彼はそれにも気付かぬまま。
ぼろぼろ涙を零し、ぎゅっと目を閉じていた。
「大丈夫か、ティナ」
「ええ」
結局ルーネスの涙は止まらず、今彼は泣き疲れて眠ったまま、クラウドに背負われていた。
日が落ちるまでに仲間と合流するために、私とルーネスを背負ったクラウドが共に歩いていた。
静かに寝息を立てるルーネスの寝顔は安らかで、心穏やかになるのだけれど。
先程の彼の様子がどうしても気になり、頭を離れない。
すると、クラウドも同様だったらしくて。
「なあ、ティナ」
「何?」
「こいつ……ルーネスは、過去に誰かを失ったのかもしれんな」
「え?」
首を傾げた私に、彼は説明してくれた。
「既視感というやつだ。前にも同じ経験をしたような気がする、という奴だが」
彼はここで、ひと呼吸置いてから。
「きっとルーネスも、誰か大事な人を失ったんだな。その経験と重なったんだろう、あんたの姿が」
「……」
私は答えることができず、ルーネスの頬に触れ、乱れた髪を整えて。
「助けてくれて、ありがとう。私は大丈夫よ」
寝顔に向かって、小声で囁いた。
*
彼自身すら覚えていない、苦しみから。
いつか彼が、目覚めますように。
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二次創作歴はオンラインで10年程度。たまに好きジャンルのアンソロ本に寄稿させていただいてました。
此度はソフト未購入なのにムービーと素敵サイト様の作品によって墜落→6キャラ総愛され→本編6カップリングプラス、とブログがおかしな進化中。結局ハード込みでソフトお買い上げ(笑)自プレイはチュートリアルで既に断念気味。